何でも質問:疑問詞と「こそあど」システム
文法の基礎編もいよいよ最後です。これまでの知識があれば、自分の考えを「述べる」だけでなく、相手に情報を「尋ねる」ことができるようになります。これが本当のサバイバルスキルです。本章では2つのツールキットを学びます。1つ目は疑問詞(何、誰、どこ、いつなど)、2つ目は日本語特有の論理的で便利な「こそあど」指示代名詞(これ、それ、あれ、どれ)です。
1. 疑問詞:質問の精鋭たち
もうご存知の通り、文の最後に「か」をつけるだけで文は疑問文になります。疑問詞は、文の中で「答えが入る場所」にそのまま置くだけです。語順を入れ替えるような難しいルールはありません。
| 単語 | 読み方 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 何 | nani / nan | what | これは何ですか。(Kore wa nan desu ka.) — これはなんですか。 |
| 誰 | dare | who | あの人は誰ですか。(Ano hito wa dare desu ka.) — あのひとはだれですか。 |
| どこ | doko | where | 駅はどこですか。(Eki wa doko desu ka.) — えきはどこですか。 |
| いつ | itsu | when | いつ日本に行きますか。(Itsu Nihon ni ikimasu ka.) — いつにほんへいきますか。 |
| どう | dō | how | 日本はどうですか。(Nihon wa dō desu ka.) — にほんはどうですか。 |
| いくら | ikura | how much (price) | これはいくらですか。(Kore wa ikura desu ka.) — これはいくらですか。 |
| どうして / なぜ | dōshite / naze | why | どうしてですか。(Dōshite desu ka.) — どうしてですか。 |
| どれ / どの〜 | dore / dono | which (one) | どれがいいですか。(Dore ga ii desu ka.) — どれがいいですか。 |
変幻自在な「何」:nani か nan か?
「何」は、d、t、nで始まる音や助数詞の前では「なん」(何ですか nan desu ka、何時 nanji、何人 nannin)と読み、それ以外では主に「なに」(何を食べますか nani o tabemasu ka)と読みます。数字の章で学んだ助数詞と「何」を組み合わせれば、質問の幅が大きく広がります:何時(nanji)、何人(nannin)、何歳(nansai)、何曜日(nan'yōbi)。
疑問詞も助詞を伴う
答えの言葉が担う役割に応じて、疑問詞もその役割を示す助詞を伴います。
誰と行きますか。(Dare to ikimasu ka.) — 誰と一緒に行きますか? → 友だちと行きます。
どこで食べますか。(Doko de tabemasu ka.) — どこで食べますか? → レストランで食べます。
何を買いましたか。(Nani o kaimashita ka.) — 何を買いましたか? → パンを買いました。
また、助詞の章で学んだルールを思い出してください。疑問詞が主語になる場合は、必ず「が」を使います(誰が来ますか)。「は」は使えません。
2. 「こそあど」システム:日本語のポインティングGPS
英語の距離感には「this」(近く)と「that」(遠く)の2種類しかありませんが、日本語には「こ・そ・あ・ど」の4つのカテゴリーがあります。すべて最初の音で判別できる、非常に論理的なシステムです。
| 接頭辞 | 範囲 | 感覚 |
|---|---|---|
| こ〜 | 自分(話し手)に近い | 「これ、ここ」 |
| そ〜 | 相手(聞き手)に近い | 「それ、そこ」 |
| あ〜 | 両者から遠い | 「あれ、あそこ」 |
| ど〜 | 不明 | 「どれ、どこ」 |
これらを使った言葉のバリエーションを見てみましょう。
| こ(自分に近い) | そ(相手に近い) | あ(遠い) | ど(疑問) | |
|---|---|---|---|---|
| 物(単体で使う) | これ (kore) | それ (sore) | あれ (are) | どれ (dore) |
| +名詞(名詞が必要) | この本 (kono hon) | その本 (sono hon) | あの本 (ano hon) | どの本 (dono hon) |
| 場所 | ここ (koko) | そこ (soko) | あそこ (asoko) | どこ (doko) |
| 方向(丁寧) | こちら (kochira) | そちら (sochira) | あちら (achira) | どちら (dochira) |
接頭辞の「こ・そ・あ・ど」さえ覚えれば、16単語を一度にマスターできます。(注:あそこだけ音が1つ多いことと、「この」は「これの」ではなく「この+名詞」になることに注意してください!)
これ vs この:重要な違い
これはペンです。(Kore wa pen desu.) — これはペンです。(「これ」は単独で使えます)
このペンは高いです。(Kono pen wa takai desu.) — このペンは高いです。(「この」は後ろに名詞が必要です)
この/その/あの/どの は単独では使えず、これ/それ/あれ/どれ は後ろに名詞を直接置くことはできません。間違えると非常に不自然に聞こえます。
日常生活における「そ」と「あ」の使い分け
「そ」は聞き手のテリトリー、「あ」はどちらのテリトリーでもない場所を指します。
それは何ですか。(Sore wa nan desu ka.) — (あなたの持っている)それは何ですか?
あれは何ですか。(Are wa nan desu ka.) — (遠くに見える)あれは何ですか?
買い物での魔法のフレーズ:自分の前にあるものを指して「これをください」と言い、店員さんの近くにあるものは「それをください」と言います。これで完璧です!
おまけ:「あの人(ano hito)」は「彼/彼女」を指す中立的な表現です。より丁寧な「あの方(ano kata)」は家族の章で学びましたね。「こちら」は丁寧な紹介にも使えます。「こちらは田中さんです」。
3. 自然な受け答え
質問と回答にはリズムがあります。答えは疑問詞の部分を置き換え、残りの部分は省略するのが一般的です。
Q: それは何ですか。(Sore wa nan desu ka.)
A: これは日本のお茶です。(Kore wa Nihon no ocha desu.) (「そ」と「こ」が入れ替わることに注意!)
Q: トイレはどこですか。(Toire wa doko desu ka.)
A: あそこです。(Asoko desu.) (丁寧な手のひらで指し示しましょう!)
Q: いつ来ましたか。(Itsu kimashita ka.)
A: 先週来ました。(Senshū kimashita.)
会話を円滑にするツール:そうです、ちがいます、わかりません、そして考える時の間として使う「そうですね…」。
4. 練習:質問トレーニング
回答を隠して、質問文や完成文を考えてみましょう。
| 課題 | 回答 |
|---|---|
| 手元にある物の値段を聞く | これはいくらですか。(Kore wa ikura desu ka.) |
| 今、何時か聞く | 今、何時ですか。(Ima, nanji desu ka.) |
| 遠くにいる人が誰か聞く | あの人は誰ですか。(Ano hito wa dare desu ka.) |
| 「どの本がおもしろいですか」と言う | どの本がおもしろいですか。(Dono hon ga omoshiroi desu ka.) |
| 友人がどこで昼食をとるか聞く | どこで昼ごはんを食べますか。(Doko de hirugohan o tabemasu ka.) |
| 「あちらのビルは銀行です」と言う | あのビルは銀行です。(Ano biru wa ginkō desu.) |
| 店員さんに「それ」を頼む | それをください。(Sore o kudasai.) |
まとめとポイント
- 疑問詞は「答えが入る場所」に置き、答えと同じ助詞をつけます(誰と、どこで、何を)。主語になる場合は「が」を使います。
- 「何」は、d/t/nの音や助数詞の前では「なん」、それ以外は「なに」と読みます。
- 「こそあど」グリッド:こ(自分)、そ(相手)、あ(遠い)、ど(疑問)。物(これ)、名詞を修飾(この+名詞)、場所(ここ)、方向(こちら)で使い分けます。
- これ/それ/あれは単独で使い、この/その/あのには名詞が必要です。
- 距離の基準は話し手と聞き手の位置関係で入れ替わります。
- 便利な返答フレーズ:そうです / ちがいます / わかりません / あそこです。
- 文法の基礎編はこれで完了です! 文を述べたり、否定したり、時間を言ったり、場所を示したり、そして質問したりできるようになりました。次のセクションでは、自己紹介を皮切りに実際の会話を学びます。