N1文法コース パート2:譲歩、フォーマルな「に/を」構文、文末表現
パートBでは、N1のカタログを完成させます。盤石な譲歩(〜であれ、〜ようが)、社説や契約書を支配する「に/を」のフォーマルな構文、地位や独自性を示すパターン、そして書き手の最終的な態度を決定づける文末表現です。さらに、断片が長く、構造が複雑に入れ子になったN1の「星印(語順整序)問題」も扱います。
1. 盤石な譲歩
| パターン | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 〜とはいえ | 〜とは言っても(事実を認める) | 春とはいえ、まだ寒い。 |
| 〜といえども | 〜でさえ(偉大な存在であっても) | 専門家といえども、ミスはある。 |
| 〜であれ/であろうと | 〜であっても;何であろうと | たとえ国王であれ、法には従うべきだ。 |
| 〜であれ〜であれ | AであれBであれ(どちらでも) | 雨であれ雪であれ、試合は行われる。 |
| 〜ようが/ようと | 〜しても(何があっても) | 人に何を言われようが、気にしない。 |
| 〜ようが〜まいが | 〜しようとしまいと | 君が信じようが信じまいが、これは事実だ。 |
| 〜いかんにかかわらず/を問わず | 〜に関係なく(官僚的な表現) | 理由のいかんにかかわらず、欠席は認めない。 |
| 〜いかんだ/いかんでは | 〜次第で | 交渉の結果いかんでは、計画を見直す。 |
| 〜ないまでも | (そこまでとは言わないが)〜ないにしても | 毎日とは言わないまでも、週一度は連絡して。 |
| 〜ならいざしらず | 〜ならともかく(今は違う) | 新人ならいざしらず、ベテランがこんなミスを。 |
| 〜こそあれ/こそすれ | Aはあるが(Bは決してない) | 程度の差こそあれ、誰にも欠点はある。感謝こそすれ、恨みはない。 |
| 〜たところで | 〜しても(無駄である) | 今さら急いだところで間に合わない。 |
| 〜ばそれまでだ | 〜したら、すべて終わりだ | 死んでしまえばそれまでだ。 |
| 〜ものを | 〜なのに(不満や後悔) | 言ってくれれば手伝ったものを。 |
| 〜とて | 〜であっても(文語) | 親とて、子の心のすべては分からない。 |
「いかん」は練習が必要です。結果いかんでは(〜次第で)と理由のいかんにかかわらず(〜に関係なく)のように、同じ古典的な名詞(如何)が正反対の方向を指します。契約書や大学の規則はこの文体を流暢に使いこなします。
2. 「に」の貴族的な表現
| パターン | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 〜に至る/に至るまで/に至っては | 〜まで、極端なケースでは | 交渉は決裂するに至った。服装から髪型に至るまで。弟に至っては挨拶さえしない。 |
| 〜に値する | 〜にふさわしい | 彼の行為は賞賛に値する。 |
| 〜に足る/取るに足らない | 〜に十分である/重要ではない | 信頼に足る人物。取るに足らない問題。 |
| 〜に難くない | 〜するのがたやすい | 悲しみは想像に難くない。 |
| 〜に堪える/に堪えない | 〜する価値がある/〜するに耐えられない | 鑑賞に堪える作品。見るに堪えない惨状。 |
| 〜に忍びない | 〜する気持ちになれない | 捨てるに忍びない。 |
| 〜に即して | (実情などに)沿って | 実情に即して判断すべきだ。 |
| 〜に照らして | (法律や例に)照らして | 法に照らして処分する。 |
| 〜に則って | (伝統や規則に)従う | 伝統に則って儀式を行う。 |
| 〜に先駆けて | 〜より先に(先駆的に) | 世界に先駆けて発表した。 |
| 〜にとどまらず | 〜だけでなく | 被害は国内にとどまらず海外にも。 |
| 〜にもまして | 〜よりもなおいっそう | 以前にもまして元気そうだ。 |
| 〜に引き換え | 〜とは対照的に | 兄に引き換え、弟は無口だ。 |
| 〜にかこつけて | 〜を口実にして | 出張にかこつけて観光した。 |
| 〜にかまけて | 〜に集中しすぎて | 仕事にかまけて家庭を顧みない。 |
| 〜にあって | (特別な時期などに) | 非常時にあって冷静さを保った。 |
| 〜にはあたらない/には及ばない | 〜する必要はない/〜に匹敵しない | 驚くにはあたらない。お越しいただくには及びません。 |
| 〜にかかっている | 〜次第である | 成功は君の努力にかかっている。 |
基盤となる3つの表現の使い分け:「に即して」は現実の事実に、「に照らして」は基準(法律)に、「に則って」は成文化された伝統に従います。すべて「in accordance with」と訳せますが、前につく名詞によって選ばれる語が決まります。これこそが試験問題のポイントです。
3. 「を」の貴族的な表現
| パターン | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 〜を皮切りに | 〜をきっかけとして(連続して) | 東京公演を皮切りに全国ツアーが始まる。 |
| 〜を限りに | 〜をもって(最後とする) | 本日を限りに閉店いたします。声を限りに叫んだ。 |
| 〜を機に/を契機に | 〜を転換点として | 結婚を機に会社を辞めた。 |
| 〜を境に | 〜を境界線として | その事件を境に人が変わった。 |
| 〜を経て | 〜を経由して(長いプロセスの後) | 十年の歳月を経て完成した。 |
| 〜を踏まえて | (事実などに)基づいて | 現状を踏まえて計画を立て直す。 |
| 〜をもって | 〜によって;〜をもって(公式な終了) | 本日をもって退職いたします。 |
| 〜を控えて | 〜を直前にして | 入試を控えて緊張している。 |
| 〜を顧みず | 〜を気にせずに | 危険を顧みず飛び込んだ。 |
| 〜をものともせずに | 〜に恐れず(ひるまず) | 反対をものともせず夢を追った。 |
| 〜をよそに | 〜を無視して(冷淡に) | 親の心配をよそに遊び歩いている。 |
| 〜をいいことに | (相手の寛大さなどを)利用して | 留守をいいことに遊びほうけている。 |
| 〜を禁じ得ない | (感情を)抑えられない | 同情を禁じ得ない。 |
| 〜をおいて〜ない | 〜以外にない | この役は彼をおいて適任者はいない。 |
態度を示す3つの表現:を顧みず(自分の安全を無視=勇敢/無謀)、をものともせず(障害に立ち向かう=英雄的)、をよそに(他人の気持ちを無視=冷淡)。文法は同じですが、文の主人公が英雄か悪役かによって使い分けられます。
4. ステータス、独自性、性格
| パターン | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 〜たるもの | 〜という立場にある者は | 教師たるもの、模範であるべきだ。 |
| 〜ともあろうものが | 〜という立場にある者が(なのに!) | 警察官ともあろうものが賄賂を。 |
| 〜ともなると/ともなれば | 〜のレベルになると | 大学生ともなると責任も重くなる。 |
| 〜ならでは | 〜だけが持つ(独自性) | 京都ならではの風情。 |
| 〜あっての | 〜が存在してこそ | ファンあってのアイドルだ。 |
| 〜きっての | (グループの中で)最高レベルの | 業界きっての実力者。 |
| 〜にして | (特定の段階で)初めて;同時に〜 | 六十歳にして初めて海外へ。彼にして初めて可能な技。 |
| 〜なりに/なりの | (謙虚な)自分自身のやり方で | 私なりに精一杯努力した。 |
| 〜ときたら | (あきれながら)〜に関しては | うちの息子ときたら、ゲームばかり。 |
| 〜としたことが | (他の人ならともかく)私が〜なんて | 私としたことが、うっかりしていた。 |
5. 文末表現:書き手の最終スタンプ
| 文末 | 態度 | 例文 |
|---|---|---|
| 〜までだ/までのことだ | 「単に〜するだけだ」 | だめなら帰るまでのことだ。聞かれたから答えたまでだ。 |
| 〜までもない | 〜する必要さえない | 言うまでもない。 |
| 〜ただ〜のみだ | 〜しかない | ただ結果を待つのみだ。 |
| 〜でなくてなんだろう | 〜でなくて何だろうか(反語) | これが運命でなくてなんだろう。 |
| 〜ではあるまいか | 〜ではないだろうか(文語的) | 誤解があるのではあるまいか。 |
| 〜ではあるまいし | 〜ではないのだから | 子供ではあるまいし、自分で決めなさい。 |
| 〜というところだ | 多くて、おおよそ | 完成度は八割といったところだ。 |
| 〜も同然だ | 〜と同じことだ | 勝ったも同然だ。 |
| 〜ものと思われる | 〜と思われる(報道) | 窓から侵入したものと思われる。 |
| 〜ものとする | 〜することとする(契約書) | 一年ごとに更新するものとする。 |
| 〜のなんのって | (口語)言葉にできないほど | 痛いのなんのって。 |
| 〜のやら | 〜だろうか(困惑) | いつ帰ってくるのやら。 |
文体の注意:「ではあるまいか(論文・随筆)」と「のなんのって(日常会話)」は訳が似ていても(「本当に!」)、文の中での互換性はありません。N1の問題5では、意味の正しさだけでなく、文体に合っているかが問われます。
6. N1における文の組み立て(5項目)
- 構造は3つ以上の断片にまたがる:〜を皮切りに/〜にとどまらず/〜まで、〜ようが〜まいが、AはおろかBすら〜ない。印刷されたスタブ(文の断片)から文構造の終わりを見つけ、後ろから組み立てます。
- 古典的な接続語は結びつきが強い:「べく」は辞書形が先行、「まじき」はその後に名詞を要求、「や否や」は辞書形に続く。文法ルールを知っていれば、意味を解釈する前に不可能な選択肢を排除できます。
- N5から変わらず:まず4つすべてを組み立ててから、★の場所を答えます。
彼は 周囲の __ _★_ __ __ 研究を続けた。
① ものともせず ② 反対を ③ 一人で ④ 黙々と
組み立て:周囲の 反対を(②) ものともせず(①) 一人で(③) 黙々と(④) 研究を続けた。★ = ①。「〜をものともせず」という構文が一瞬で2つの断片を消費しました。必ず構文から先に処理しましょう。
要約と重要なポイント
- 譲歩の鎧:であれ、ようが〜まいが、いかんにかかわらず、ないまでも、こそすれ。後悔には「ものを」。
- 基盤となる3つ:即して(事実) / 照らして(基準) / 則って(伝統) — 先行する名詞で決まる。
- 「を」の貴族的な表現は時と態度を表す:皮切りに(開始)、を限りに(最後)、を経て(長い道のり)。顧みず/ものともせず/をよそに = 勇敢/英雄的/冷淡。
- ステータスのセット:たるもの(職務)、ともあろうものが(スキャンダル)、ならでは(独自の栄光)、あっての(存在理由)。
- 文末は態度と文体を刻印する — 論文の「ではあるまいか」、契約書の「ものとする」、会話の「のなんのって」。N1では文体適合も正解の一部です。
補足:その他の出題範囲
上記の章では、レベル別の文法を系統立てて学びました。以下のリストは公式リストの残りをカバーしています。N1のリストに登場し、核となる意味と自然な例文を掲載しています。試験前の最終チェックリストとして活用してください。今一度すべてに目を通し、試験前には即座に意味を確認できるようにしておきましょう。
| パターン | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| ときている | 〜だから(さらに付け加えると) | 安くてうまいときているから、人気は当然だ。 |
| ところを | 〜の時に(謝罪や感謝) | お忙しいところをありがとうございます。 |
| とっさに | 即座に;反射的に | とっさに身をかわした。 |
| となると/となれば | 〜ということになると;その場合 | 実際に引っ越すとなると、金がかかる。 |
| とは打って変わって | 〜とは全く異なって | 昨日とは打って変わって、今日は快晴だ。 |
| とは比べものにならない | 〜と比較にならない | 以前とは比べものにならないほど上達した。 |
| とばかりに | 〜と言わんばかりに | 帰れとばかりに、彼はドアを指さした。 |
| とみると | 〜と判断すると | 勝てないとみると、すぐ逃げる。 |
| ともなく/ともなしに | 意図せずに | どこからともなく、いい匂いがしてくる。 |
| とも~とも | 〜か〜か判断できない | 本当とも嘘ともつかない話だ。 |
| ないものでもない | 〜ないわけではない(可能性がある) | 頼まれれば、引き受けないものでもない。 |
| ないとも限らない | 〜しない可能性もある | 事故が起きないとも限らない。 |
| なくしては | 〜なしでは(不可欠) | 涙なくしては語れない物語だ。 |
| 何しろ | とにかく;(理由は〜なのだから) | なにしろ暑くて、何もする気になれない。 |
| なり~なり | 〜や〜といった(例) | 電話なりメールなりで連絡してください。 |
| に至っても | 〜という段階に達しても | この期に至っても、まだ言い訳をするのか。 |
| に言わせれば | 〜の意見によれば | 母に言わせれば、私はまだまだ子供らしい。 |
| にかかっては/にかかると/にかかれば | 〜の手にかかると(結果が変わる) | 彼にかかると、どんな話も面白くなる。 |
| に限ったことではない | 〜だけでなく | 彼の遅刻は今日に限ったことではない。 |
| にしたところで/としたところで | 〜でさえも(状況は変わらない) | 私にしたところで、名案があるわけではない。 |
| に耐える/に耐えない | 〜する価値がある/〜するのが耐えがたい | 鑑賞に耐える作品。見るに耐えない惨状。 |
| には当たらない | 〜する必要はない(驚くほどではない) | 彼が勝ったからといって驚くには当たらない。 |
| には無理がある | 合理的ではない;強引だ | この計画には無理がある。 |
| にまつわる | 〜に関連した(物語) | この城にまつわる伝説を集めた。 |
| にもほどがある | 〜にも限度がある | 冗談にもほどがある。 |
| にも増して | 〜よりもなお | 以前にも増して元気そうだ。 |
| によらず | 〜に関係なく | 見かけによらず、彼は力持ちだ。 |
| に~を重ねて | 〜に〜を繰り返して(蓄積) | 改良に改良を重ねて完成させた。 |
| のやら~のやら | 〜か〜か(不確か) | 喜んでいいのやら悲しんでいいのやら。 |
| はそっちのけで/をそっちのけで | 〜を完全に無視して | 宿題はそっちのけで遊んでいる。 |
| はどうであれ | 何であれ(結果は変わらない) | 結果はどうであれ、悔いはない。 |
| ばこそ | まさに〜だからこそ | あなたのためを思えばこそ、厳しく言うのだ。 |
| びる/びた | 〜のようだ;〜っぽい | ずいぶん大人びた話し方をする子だ。 |
| ぶる/ぶった | 〜のふりをする | 彼はいつも学者ぶって話す。 |
| ほうがましだ | (〜より)〜の方がいい | あんな会社で働くくらいなら、辞めたほうがましだ。 |
| ほどのことではない | 〜する価値はない | 医者に行くほどのことではない。 |
| まるっきり | 全く(〜ない) | 泳ぎはまるっきりだめだ。 |
| めく | 〜の兆しがある | 日ごとに春めいてきた。謎めいた人物。 |
| もさることながら | 〜はもちろん(それ以上に〜) | 味もさることながら、盛り付けも美しい。 |
| もしないで | 〜さえせずに | 調べもしないで批判するな。 |
| もしくは | または(フォーマル) | 電話もしくはメールでご連絡ください。 |
| ものとして | 〜という前提で | 全員出席するものとして準備を進める。 |
| やれ~やれ | 〜やら〜やら(不満の羅列) | やれ税金だ、やれ保険料だと、出費ばかりだ。 |
| ようが~ようが/ようと~ようと | 〜でも〜でも(結果は同じ) | 雨が降ろうが槍が降ろうが、必ず行く。 |
| ようによっては/ようでは | 〜の仕方によっては | 考えようによっては、これはチャンスだ。 |
| ようにも~ない | 〜したくてもできない | 忙しくて、休もうにも休めない。 |
| わ~わで | 〜や〜で(ひどい状況の並列) | 財布は落とすわ、雨には降られるわで、散々だった。 |
| を押して/を押し切って | (反対や無理を)押し切って | 病を押して試合に出場した。反対を押し切って結婚した。 |
| を前提として | 〜を前提に | 結婚を前提として交際している。 |
| んがために | 〜するために(文語) | 勝たんがために、あらゆる努力をした。 |
| んばかりに | まさに〜しそうな状態で | 泣かんばかりの顔で頼まれた。あふれんばかりの拍手。 |