N3 文章の文法:文章を構成する文法

N3の「文章の文法」(全5問)では、短い日記のような文章から卒業し、まとまりのある一貫した文章を扱います。エッセイや説明文などの空欄に、接続詞、指示語、時制・アスペクト、文末表現などを入れる問題が出題されます。重要なのは、筆者の論理の筋道を読み取り、流れをスムーズにする言葉を選ぶスキルです。この章では、N3レベルの接続詞、書き言葉のツールキット、そして練習問題を通して、文章の文法を攻略します。

1. N3の接続詞マスター

N5で習う「そして」「でも」「だから」を超えて、N3の文章では以下のような接続詞が論理の方向性を示します。

役割接続詞メモ
添加さらに, そのうえ, しかも上の内容に情報を重ねる — 「さらに値段も上がった」
予期せぬ転換ところが期待していたこととは違う現実が起こる
逆接しかし, けれども, それでも, それなのにそれでも=「~だが、それにもかかわらず(頑張る)」;それなのに=「~なのに(ひどい!)」
原因→結果そのため(に), その結果, したがって「だから」のフォーマルな表現
言い換えつまり, すなわち, 要するに前の内容をまとめたり、言い換えたりする
例示例えば前の主張に対する具体例を挙げる
対比・選択一方(で), それとも, または「一方」は別の側面へ視点を切り替える
話題転換ところで, さて, では「さて」は新しい話題へ正式に移る時
順序まず, 次に, 最後に, 結局結局 =「最終的に、結局のところ」

試験で迷いやすいペアを意識しましょう:ところが vs ところで(予想外の転換 vs 話題の切り替え)、つまり vs 例えば(要約 vs 例示)、それでも vs それなのに(前向きな決意 vs 不満な感情)。「なんとなく良さそう」ではなく、必ず前後の文章の「論理関係」から答えを選んでください。

2. 指示語と文章の繋がり(結束性)

  • その+名詞, それ, そこ, そう — 直前に述べた内容を指します(N5と同じですが、N3では「そのこと→それについて→そう考えると…」のように連鎖します)。
  • この+名詞 — 小論文などでは、筆者が今まさに提示している話題を指します。例:このように(=以下のように)、この問題(=私が論じているこの問題)。
  • 同一トピックでの省略: 「~は」というトピックは、段落全体を支配します。引用意見や例示の後でも、隠れた主語が何かを把握できているかどうかが問われます。
  • 〜のだ/〜のである — 前の内容を「解説・主張」する文末です。空欄選択肢で「〜のだ(説明)」と「〜だ(単なる事実)」が並んだ場合、前の文の理由や補足説明になっていれば「〜のだ」が正解です。

3. 書き言葉の文法(硬い文体)

N3の文章では、フォーマルな「書き言葉」が登場します。以下の形を即座に認識できるようにしましょう。

意味
〜である/〜であろう書き言葉の断定/推量(=だ/だろう)日本は島国である。
連用中止(ます形からますを除いた形)書き言葉の「~して、~」朝早く起き、顔を洗い、出かけた。
〜により/〜による~によって/~によると大雨により、本日の便は欠航します。
〜ず(に)~しないで(書き言葉)何も言わずに帰った。
〜ている→〜ており文中の「~ています」人口は年々減っており、対策が必要だ。

空欄補充では「文体(レジスター)」の一致が重要です。「である」調の文章の中に、突然「です」調は入りません。文章の最初の一、二行を読み、文体を特定すれば、不適切な文体の選択肢をすぐに消去できます。

4. 時制・アスペクトと視点の流れ

  • 過去の物語と現在の解説: 日本語の文章は「た(過去の出来事)」と「る(一般的な真理・コメント)」の間を行き来します。一般的な主張の中の空欄は、物語が過去の話であっても「る」を選びます。例:昨日公園へ行った。休日の公園は人が(多い)。
  • 〜てくる/〜ていく: 過去から現在に向かってくる変化(増えてきた) vs 現在から未来に向かっていく変化(増えていく)。視点がどこにあるかで決まります。過去から現在までの話なら「てきた」、将来の予測なら「ていく」を選びます。これはN3の定番問題です。
  • 〜ようになった/〜つつある(導入): 「以前 vs 現在」の対比を作る、段階的な変化を表す文末表現です。

5. 練習問題(試験シミュレーション)

私は去年から自転車で通勤している。始めたきっかけは健康のためだった。【1】、続けているうちに、思わぬいいことに気がついた。
朝の道を走ると、季節の変化がよく見えるのだ。桜が咲き、緑が濃くなり、葉が落ちる。車で通勤していたときは、【2】ことに全く気づかなかった。
【3】、いいことばかりではない。雨の日は大変だし、夏は汗をかく。【4】、私はこれからも自転車通勤を続けるつもりだ。体だけでなく、心も元気になったからだ。

  1. 健康のため始めたが、意外なメリットに気づいた。話の流れが変わる転換点。「しかし」や「ところが」のような逆接が適当。
  2. 指示語の空欄。車で通勤していた時は「季節が変わっていくこと」に気づかなかった、という文脈なので、「そういうこと」や「そのこと」のような、直前の内容を指す言葉が入る。
  3. 「いいことばかりではない」と、デメリットへ視点を切り替える。「もちろん」や「確かに」といった譲歩が適当。
  4. デメリットを認めた上で「それでも続ける」という強い意志。「それでも」が文脈に合う。また、最後の文が「~からだ」で理由を説明しており、論理が完結している。

【3】-【4】の流れに注目してください。「もちろん(譲歩)」→「しかし(デメリット)」→「それでも(再主張)」という波は、日本語の論説文における黄金パターンです。読解問題や概要理解のリスニングでもこのリズムを意識しましょう。

6. 問題3の戦略チェックリスト

  • まず文章全体に目を通す — 空欄は文章の流れの一部です。全体を読まないと正解は出せません。(N3レベルなら1分以内で)
  • 空欄の種類を分類する: 接続詞か? 指示語か? 時制か? 文末か? 分類によって解き方のルールが決まります。
  • 接続詞は自分の言葉で補う: 選択肢を見る前に、「ここは逆のことを言っているな」「ここは例を挙げているな」と自分で論理関係を確認します。
  • 文体チェック: 「である」調か「です」調かを確認し、文体が合わない選択肢を即座に消去します。
  • 意見文では「譲歩→逆接→再主張(もちろん…しかし…それでも)」の波を予測しましょう。

まとめと重要ポイント

  • N3の文章文法=「接続詞+指示語+時制・アスペクト+文体」の組み合わせ。
  • 接続詞の使い分け:ところが(驚き)/ところで(話題転換)、つまり(要約)/例えば(具体例)、それでも(逆境の中での継続)/それなのに(不満)。
  • 指示語:そ系(振り返る)、この系(筆者の論点)、のあ文末(理由の説明)。
  • 書き言葉:である、連用中止(起き、洗い…)、により、ず、ており — 文体の統一を意識する。
  • てくる(現在まで) vs ていく(未来へ) — 視点の位置で判断。
  • 譲歩から始まる論理の波(もちろん…それでも)を掴むと、一度に複数の空欄が解ける。