1. 地球の内部をどうやって調べるの?

みなさん、こんにちは!この章では、私たちが住んでいる「地球の中身」がどうなっているのかを学びます。地球の半径は約 \(6400 \text{ km}\) もありますが、人間が実際に穴を掘って到達できたのは、たったの \(12 \text{ km}\) 程度です。これは、リンゴに例えると皮の厚さにも満たない距離です。

では、直接見ることができない地球の内部を、科学者たちはどうやって調べているのでしょうか?その鍵を握るのが「地震波」です。地震波は、地球の内部を伝わる性質を持っており、その伝わり方を分析することで、まるで病院のCTスキャンのように地球の中身を透かして見ることができるのです。

最初は難しく感じるかもしれませんが、パズルを解くような感覚で進めていきましょう!


2. 走時曲線と震源距離の計算

地震が発生したとき、観測点に地震波が届くまでの時間(走時)をグラフにしたものを走時曲線と呼びます。このグラフを読み解くことで、震源がどれくらい遠くにあるのかを計算できます。

(1) P波とS波の速さの違い

地震波には大きく分けて2つの種類があります。
P波(Primary wave):伝わるスピードが速い。初期微動を引き起こす。
S波(Secondary wave):伝わるスピードが遅い。主要動を引き起こす。

この2つの波の「到着時間の差」を初期微動継続時間(S-P時間)と言います。震源から遠くなるほど、この時間は長くなります。

(2) 震源距離を求める公式

地震波の速度が一定であると仮定すると、震源からの距離 \(d\) は、P波の速度を \(V_p\)、S波の速度を \(V_s\)、S-P時間を \(T\) とすると、次の式で表されます。

\(d = \frac{V_p \cdot V_s}{V_p - V_s} \times T\)

この式は「大森公式」の基礎となる考え方です。計算問題でよく使われるので、文字の置き方に慣れておきましょう!

ポイント
走時曲線が「直線」ではなく、わずかに「曲線」を描いている場合、それは地球の深いところほど地震波の伝わる速度が速くなっていることを示しています。これは、深い場所ほど密度や圧力が変化している証拠です。


3. 地震波から見た地球の層構造

地震波の伝わり方を詳しく調べると、ある特定の深さで波の速さが急激に変わったり、波が反射・屈折したりする場所があることがわかりました。これにより、地球はタマネギのような層構造になっていることが判明しました。

(1) 地殻とマントルの境界

地下数km〜数十kmの場所に、地震波の速度が急に速くなる境界があります。これを発見者の名をとってモホロビチッチ不連続面(モホ面)と呼びます。ここを境に、上が「地殻」、下が「マントル」です。

(2) 外核とシャドウゾーン

さらに深く調べると、地表からの角度(震央距離)が \(103^\circ\) から \(143^\circ\) の範囲には、地震波がほとんど届かない領域があることがわかりました。これをシャドウゾーン(影の領域)と呼びます。

なぜシャドウゾーンができるのか?
地下約 \(2900 \text{ km}\) にある「マントル」と「核」の境界(グーテンベルク不連続面)で、地震波が大きく屈折するためです。
液体である証拠
この境界より深い外核では、S波が伝わることができません。S波は液体中を伝わらない性質があるため、外核は液体状態であると考えられています。

(3) 内核の発見

シャドウゾーンの中にも、ごく弱いP波が届くことがあります。これは、外核のさらに奥(地下約 \(5100 \text{ km}\))に固体の内核が存在し、その境界(レーマン不連続面)で波が反射・屈折しているためです。

よくある間違い
「マントルは液体だ」と思い込んでいる人が多いですが、これは間違いです!マントルは固体です(S波が伝わるから)。長い年月をかけてゆっくり流動はしていますが、ドロドロの液体ではありません。


4. 最新の調査技術:地震波トモグラフィー

これまでの「層構造」は、地球を平均的なモデルとして捉えたものでした。しかし、最新のコンピュータ解析技術によって、地球内部の「温度のムラ」まで見えるようになってきました。これが地震波トモグラフィーです。

仕組み:
世界中で観測された膨大な地震波データを解析します。周囲より地震波が速く伝わる場所は「温度が低く硬い場所」、遅く伝わる場所は「温度が高く柔らかい場所」と判断します。
何がわかるのか:
冷えて重くなったプレートがマントルの底まで沈み込んでいく様子や、逆にマントルの深いところから熱い物質が上昇してくる様子を立体的に描き出すことができます。

豆知識
地震波トモグラフィーの「トモグラフィー」は、ギリシャ語の「断層(tomo)」と「記録(graphy)」を組み合わせた言葉です。医療用のCT(Computerized Tomography)と同じ仕組みなんですよ!


5. この章のまとめ

ポイント:地球内部の重要キーワード
走時曲線: 地震波の到着時間と距離の関係を示す。傾きから速度がわかる。
モホ面: 地殻とマントルの境界。
グーテンベルク面: マントルと外核(液体)の境界。シャドウゾーンの原因。
レーマン面: 外核と内核(固体)の境界。
地震波トモグラフィー: 地震波の速度変化から内部の3次元構造を調べる技術。

地球の内部構造を知ることは、次に学ぶプレートテクトニクスや火山・地震の仕組みを理解するための「基礎の基礎」になります。まずは、地震波という「目」を使って地球の中を覗いているイメージを大切にしてくださいね!

※地球内部の具体的な温度や密度、構成物質については、次の「地球内部の状態と物質」の章で詳しく学習します。