第1章:地球の自転と公転
私たちは普段、地面の上にじっと立っているとき、地球がものすごいスピードで動いているとは実感できません。しかし実際には、地球はコマのように勢いよく回転し(自転)、さらに太陽のまわりを猛スピードで回っています(公転)。
「星や太陽が空を動いているように見えるけれど、本当に動いているのは地球のほうなの?」という疑問を、科学者たちが実験や観測によってどのように証明してきたのかを学んでいきましょう!最初は少し難しく感じるかもしれませんが、身近な例えを使いながら一つずつ整理していきますので安心してくださいね。
1. 地球の自転とその証拠
地球が自分自身の地軸(北極と南極を結ぶ軸)を中心に回転することを自転といいます。
自転の向きは西から東(北極側から見下ろすと反時計回り)です。太陽や星が東から昇って西へ沈む「日周運動」が見えるのは、地球が西から東へと自転しているためです。
しかし、単に空の星が動いて見えるだけでは、「天球全体が回っているのか、地球が回っているのか」の決定的な証拠にはなりません。地球そのものが自転していることを地上での実験で決定づけたのが、フランスの物理学者フーコーによる実験です。
フーコーの振り子(自転の決定的な証拠)
1851年、フーコーは巨大な振り子を天井から吊るして振動させました。すると、時間が経つにつれて振り子の振動面がゆっくりと回転していく様子が観察されたのです。
振り子は一度揺れ始めると、外から力を加えない限り、元の揺れの方向(慣性系における振動面)を保ち続けます。それなのに地上から見ると振動面が回転して見えるということは、「振り子の振動面が回ったのではなく、振り子の下の地面(地球)が回転している」ということを意味します。
【振動面の回転周期と緯度の関係】
・北極点・南極点:振り子の振動面は時計回り(北極の場合)に24時間でちょうど1回転(\(360^\circ\))します。真上から見ると、地面が反時計回りに1日1回転しているため、地面に立つ観察者には振動面が逆向きに24時間で1回転するように見えます。
・赤道:地面が振り子の振動面と平行に移動するため、振動面の回転は起こりません(回転周期は無限大)。
・緯度 \(\theta\) の地点:振動面が1回転するのにかかる時間 \(T\) は、次の式で表されます。
\(T = \frac{24}{\sin\theta}\)(時間)
緯度が高いほど速く回転し、緯度が低くなるにつれて回転に要する時間は長くなります。
【ポイント】
北半球では振り子の振動面は時計回りに回転して見え、南半球では反時計回りに回転して見えます。赤道では回転しません!
【よくある間違い】
「空の太陽や星座が東から西へ1日に1周するから、自転の証拠だ」と答えてしまうミスがよくあります。これはあくまで見かけの運動(日周運動)であり、天動説(天球が回っているという考え)でも説明できてしまうため、自転の独立した物理的証拠にはなりません。自転の物理的証拠としてフーコーの振り子をしっかりと答えられるようにしましょう。
2. 地球の公転とその証拠
地球が太陽のまわりを1年かけて回る運動を公転といいます。
公転の向きも自転と同じく反時計回り(北極側から見て西から東)です。太陽が星座の間を1年かけて移動するように見える「年周運動」は公転によるものですが、これも自転の日周運動と同様に、地球が動いている証拠を直接示す観測が必要でした。
証拠①:年周視差(ねんしゅうしさ)
走る電車の窓から景色を眺めると、近くの木や看板は激しく動いて見えるのに対し、遠くの山はほとんど位置が変わりません。これと同じ現象が恒星の観測でも起こります。
地球が太陽のまわりを公転しているため、半年離れた2つの地点から同じ恒星を観測すると、背景の非常に遠い星々に対して、手前にある星の位置がわずかにずれて見えます。この見かけのズレの角度(地球の軌道半径を見込む角度)を年周視差とよびます。
年周視差 \(p\)(単位:秒、記号:arcsec)と星までの距離 \(d\)(単位:パーセク、記号:pc)の間には、次のきわめて重要な関係式が成り立ちます。
\(d = \frac{1}{p}\)
※年周視差が \(1''\)(1秒角=\(\frac{1}{3600}\)度)となる距離を\(1\text{ pc}\)(パーセク)と定義しています。
恒星は非常に遠くにあるため、年周視差は最大でも \(1''\) 未満と極めて小さな値です。1838年にベッセルらによって初めて実際に観測され、地球の公転の揺るぎない証拠となりました。
証拠②:年周光行差(ねんしゅうこうこうさ)
雨の日に立ち止まっているとき、雨が真上から垂直に降っていても、前を向いて歩き始めると雨粒は斜め前方から吹き付けてくるように感じますよね。傘を少し斜め前に傾ける必要があります。
これとまったく同じことが、宇宙から届く「光」に対しても起こります。地球が公転軌道を秒速約 \(30\text{ km/s}\) という猛スピードで疾走しているため、星からやってくる光が地球の進行方向にわずかに傾いて見える現象を年周光行差といいます(1728年、ブラッドリーが発見)。
公転に伴って地球の運動方向は1年をかけてぐるりと向きを変えるため、星の見かけの位置は1年周期で小さな楕円を描くように変動します。この光行差の傾きの大きさは光の速さ(光速)と地球の公転速度の比によって決まるため、地球が公転運動をしている直接的な証拠となります。
【豆知識】
年周視差は星までの距離によって値が変わります(遠い星ほど小さくなり、測定が難しくなります)。一方、年周光行差の最大角(約 \(20.5''\))は、地球の公転速度と光の速度だけで決まるため、どんなに遠い星でも同じ大きさで見られます!そのため、歴史的にも年周光行差の方が年周視差より100年以上早く発見されました。
3. 時刻と太陽暦
地球の自転と公転は、私たちが普段使っている「時間」や「カレンダー(暦)」の基準になっています。
太陽日と恒星日
地球が1回自転するのに要する時間には、何を基準にするかによって2種類の測り方があります。
・恒星日:非常に遠くにある恒星を基準にして、地球がちょうど \(360^\circ\) 自転する時間。約23時間56分4秒。
・太陽日:太陽を基準にして、太陽が南中してから次に南中するまでの時間。約24時間。
なぜ太陽日のほうが恒星日より約4分長いのでしょうか?
地球は自転しながら、同時に太陽のまわりを公転しています。地球が \(360^\circ\) 自転する間に、地球は公転軌道上を約 \(1^\circ\)(\(360^\circ \div 365\text{日} \approx 0.986^\circ\))進んでしまいます。
そのため、太陽が再び真南(南中)に来るためには、地球は \(360^\circ\) よりも約 \(1^\circ\) 余計に自転しなければなりません。この約 \(1^\circ\) 分の自転にかかる時間が約4分(\(24\text{時間} \times \frac{1^\circ}{360^\circ} = \frac{1440\text{分}}{360} = 4\text{分}\))であるため、太陽日は恒星日より約4分長くなるのです。
時刻の決め方
・視太陽時:日時計のように、実際の太陽の南中を基準にした時刻。地球の公転軌道が楕円であることや地軸の傾きにより、1日の長さが季節によってわずかに伸び縮みします。
・平均太陽時:視太陽時の伸び縮みを平均化し、仮想的な「1年中一定の速さで動く太陽(平均太陽)」を考えて定めた均一な時刻。私たちが日常生活で用いている24時間の基準です。
・中央標準時:世界各地でばらばらの地方時を使うと不便なため、国や地域ごとに特定の経線の平均太陽時を共通の時刻として設定したもの。日本の標準時(日本標準時)は東経 \(135^\circ\)(兵庫県明石市などを通る子午線)の時刻を採用しています。
太陽暦とうるう年
太陽の運行(季節のめぐり)を基準にした暦を太陽暦といいます。春分から次の春分までの時間を1回帰年といい、その長さは約 \(365.2422\text{日}\) です。
カレンダーの1年を365日と決めると、毎年約 \(0.2422\text{日}\)(約5時間49分)のズレが生じてしまい、4年でおよそ1日分季節がズレてしまいます。
現在世界中で広く使われている「グレゴリオ暦」では、このズレを修正するためにうるう年(閏年)を設けています。
【うるう年のルール】
1. 西暦年数が4で割り切れる年を原則としてうるう年(366日)とする。
2. ただし、100で割り切れる年は平年(365日)とする。
3. さらに、400で割り切れる年はうるう年(366日)とする。
このように細かい例外を設けることで、カレンダーと地球の公転による季節の移り変わりとのズレを数千年にわたって極めて小さく保っています。
まとめチェックシート
最後に、テストや復習で問われやすい重要ポイントを一覧で確認しましょう!
・自転の証拠:フーコーの振り子(振動面が回転。北極では24時間で時計回りに1回転、赤道では回転しない)
・公転の証拠:
① 年周視差(星までの距離 \(d = 1/p\)[\(\text{pc}\)])
② 年周光行差(地球の公転速度と光速により星の光が傾いて見える)
・恒星日と太陽日:太陽日は地球が公転しているために約 \(1^\circ\) 余分に自転する必要があり、恒星日(約23時間56分)より約4分長い(約24時間)
・太陽暦:1回帰年(約 \(365.2422\text{日}\))の端数を調整するため、規則正しい「うるう年」を設定している