第4章:遺伝情報とタンパク質の合成

皆さん、こんにちは!前の章では「DNAが遺伝子の本体であること」を学びました。では、そのDNAの情報は、私たちの体の中で一体どのように使われているのでしょうか?
この章では、DNAという「設計図」から、私たちの体を作る「タンパク質」が完成するまでの流れを学んでいきます。最初はカタカナの用語が多くて難しく感じるかもしれませんが、仕組みはとてもシンプルです。一歩ずつ一緒に見ていきましょう!

1. タンパク質の重要性

私たちの体は、水分を除くとその大部分がタンパク質でできています。筋肉、皮膚、髪の毛はもちろん、体内の化学反応を助ける「酵素」や、病気から体を守る「抗体」もすべてタンパク質です。
つまり、「どんなタンパク質を作るか」が、その生物の特徴(形質)を決めているのです。

【ポイント】
DNAの塩基配列(A, T, G, Cの並び方)が、タンパク質の成分であるアミノ酸の配列(並び順)を決めています。

2. 遺伝情報の流れ(セントラルドグマ)

遺伝情報は、DNA → RNA → タンパク質 という一方向の流れで伝わります。この原則をセントラルドグマと呼びます。

ここで新しい用語「RNA(リボ核酸)」が登場します。DNAと似ていますが、少しだけ違う特徴を持っています。

DNAとRNAの違い
  • 糖の種類: DNAはデオキシリボース、RNAはリボース
  • 塩基の種類: DNAはA, T, G, C。RNAはA, U, G, C(Tの代わりに U:ウラシル が入ります)。
  • 構造: DNAは二重らせん、RNAはふつう1本鎖

【豆知識】
DNAは大切な「設計図の原本」なので、核の中で厳重に保管されています。一方で、RNAは「必要な部分だけを書き写したコピー」のような役割を果たします。

3. ステップ1:転写(てんしゃ)

核の中で、DNAの塩基配列の一部(遺伝子)をRNAに書き写す過程を転写と言います。

プロセスの概要:
1. DNAの二重らせんが一部ほどける。
2. DNAの一方の鎖を型(鋳型)にして、相補的な塩基を持つRNAのヌクレオチドが結合していく。
3. 書き写されたRNAが完成する。
※このとき、DNAの「A」に対しては、RNAでは「U」が結合します。

【よくある間違い】
転写でできるのは「RNA」です。「DNA」が増えるのは「複製」ですので、混同しないように注意しましょう!

4. ステップ2:翻訳(ほんやく)

核で作られたRNAは細胞質へ出ていき、その塩基配列をもとにアミノ酸がつながってタンパク質が作られます。この過程を翻訳と言います。

プロセスの概要:
1. RNAの塩基3個の並びが、1個のアミノ酸を指定する。
2. 指定されたアミノ酸が順番につながり、長い鎖になる。
3. つながったアミノ酸の鎖が折りたたまれて、特定の機能を持つタンパク質になる。

【計算のポイント】
アミノ酸1個を決めるのに塩基が3個必要です。テストでよく出る計算式を覚えておきましょう!
\(アミノ酸の数 = 塩基の数 \div 3\)
例:900個の塩基からなるRNAからは、300個のアミノ酸がつながったタンパク質が作られます。

5. ゲノムと遺伝子

似たような言葉ですが、しっかり使い分けましょう。

  • 遺伝子: タンパク質の情報を持っているDNAの特定の領域。
  • ゲノム: その生物が生命活動を営むのに必要な最小限の一組の遺伝情報

たとえ話で理解しよう!
「ゲノム」が図書館にある全30巻の百科事典セットだとすると、「遺伝子」はそこに含まれる一つひとつの項目(記事)のようなものです。記事がない余白の部分もたくさんありますが、セット全体で「ゲノム」と呼びます。

【ポイント】
ヒトのゲノムは約30億塩基対ありますが、実際に遺伝子として働いている部分は、全体のわずか数パーセント程度です。

6. 遺伝子の発現

私たちの体の細胞(筋肉の細胞も、目の細胞も)は、すべて同じDNAを持っています。しかし、筋肉では筋肉に必要なタンパク質が、目では目に必要なタンパク質が作られています。

これは、「すべての遺伝子が常に働いているわけではなく、細胞の種類や時期によって、使われる遺伝子が選ばれている」からです。このように遺伝子が働いてタンパク質が作られることを、遺伝子の発現(はつげん)と言います。

【クイック復習】
・DNA → RNA は「転写
・RNA → タンパク質 は「翻訳
・塩基3個 = アミノ酸1個
・全遺伝情報の1セット = ゲノム

最初は用語を覚えるのが大変ですが、「コピーをとる(転写)」→「翻訳して組み立てる(翻訳)」という流れさえつかめば大丈夫です!何度も復習して、自分なりのイメージを作ってみてくださいね。