「景気循環(Business Cycles)」へようこそ!
なぜ経済はジェットコースターのように動くのでしょうか?ある時は誰もが積極的に雇用や支出を行い、またある時はすべてが静まり返り、先行きが不透明になります。CFAカリキュラムでは、こうした上下の動きを景気循環(Business Cycle)と呼びます。アナリストとして賢い投資判断を下すためには、現在がサイクルのどの位置にあるのかを理解することが不可欠です。最初は要素が多くて難しく感じるかもしれませんが、大丈夫です。一つひとつ丁寧に分解して見ていきましょう!
1. 景気循環とは何か?
景気循環とは、長期的な成長トレンドに対する経済活動の変動のことです。忘れてはならないのは、これらのサイクルは時計のように正確に予測できるものではないということです。期間や強さはその時々によって異なります。
4つの局面
経済を「呼吸」に例えてみましょう。膨らむ(吸う)時と、縮む(吐く)時があります。
- 拡大期(Expansion): 「好景気」です。GDPは成長し、雇用は増え、企業は利益を上げます。
- 山(Peak): 丘の頂上です。成長が鈍化し、経済が「過熱」し始めます。
- 後退期(Contraction/Recession): 「滑り台」です。GDPは縮小し、失業率が上昇し始めます。
- 谷(Trough): 底です。悪化が止まり、再び上向き始める地点です。
クイック復習: 拡大期は「谷」から「山」へ、後退期は「山」から「谷」へ向かう局面です。シンプルですね!
2. 企業の対応:在庫と労働
サイクルが変化しても、企業は一夜にしてすべてを変えるわけではありません。彼らは在庫(Inventories)と労働(Labor)という2つの指標を注視しています。
在庫のシーソー
企業は、棚に置く商品を適量に保とうと努力します。
- 山に近い頃: 売上が予想外に鈍化し、商品が積み上がります。在庫対売上高比率(Inventory-to-Sales ratio)が上昇します。これを解消するために企業は生産を削減し、それが景気後退の引き金となります。
- 谷に近い頃: 売上が上向き、棚が空になります。在庫対売上高比率が低下します。企業は需要に追いつくために雇用と生産を増やし、拡大期を呼び込みます。
労働:なぜ雇用の動きは遅いのか?
企業は採用や研修にコストがかかるため、人を解雇することを嫌います。これが、雇用が遅行指標(lagging indicator)である理由です。
- 景気後退の初期には、解雇する代わりに残業時間を減らします。
- 拡大期の初期には、正社員を雇う前に派遣スタッフを活用したり、残業を増やしたりして対応します。
重要ポイント: コストがかかるため、労働市場は経済全体の動きから通常「遅れ」て反応します。経済が回復し始めても失業率が依然として高いのは、よくあることなので驚かないでくださいね!
3. 経済学の学派
景気循環の原因については諸説あります。試験のために「3大派閥」を把握しておきましょう。
A. 新古典派(Neoclassical School)
市場は自己修正能力があると考えます。不況になれば自然と賃金が下がり、経済は勝手に修復されるという考え方です。モットーは「放っておけば良くなる」。
B. ケインズ派(Keynesian School)
賃金は「硬直的(sticky)」であると考えます。人々は減給を嫌うため、賃金は簡単には下がりません。市場が自然に修復されるのを待っていては遅いため、政府が介入して支出を増やしたり減税したりして、需要を「キックスタート(始動)」させるべきだと主張します。
C. マネタリスト派(Monetarist School)
景気循環の原因は、中央銀行がマネーサプライ(通貨供給量)の管理を誤ることに起因すると考えます。解決策は、マネーサプライを安定的かつ予測可能な成長率で保つことです。
暗記のコツ:
- Keynesian = Kickstart(政府による介入)
- Monetarist = Money Supply(マネーサプライ重視)
4. 失業:すべての失業が同じではない
景気循環を理解するには、労働力を詳しく見る必要があります。「失業者」とは、仕事を探し続けている人を指します。諦めて職探しをやめると「非労働力人口(discouraged worker)」となり、失業率にはカウントされなくなります!
失業の種類
- 摩擦的失業(Frictional): 転職活動中などの「一時的な」失業。これは正常な現象であり、健全なことです(例:新卒が初めての職を探している状態)。
- 構造的失業(Structural): スキルと需要の不一致。企業はITスキルを求めているのに、労働者は製造業のスキルしか持っていないといったケース。解消は困難です。
- 循環的失業(Cyclical): これが景気循環によって引き起こされる「悪い」失業です。景気が悪くなると、多くの人が職を失います。
豆知識: 「完璧な」経済であっても、失業率はゼロにはなりません。必ず一定の摩擦的・構造的失業は存在します。これを自然失業率(Natural Rate of Unemployment)と呼びます。
5. インフレ:上昇する波
インフレ(Inflation)とは、物価水準が持続的に上昇することです。デフレ(Deflation)は物価が実際に下がる現象(経済にとって非常に危険です)。ディスインフレ(Disinflation)は、インフレ率が低下することを指します(物価はまだ上がっていますが、そのスピードが鈍化している状態です)。
インフレの2つの要因
1. コスト・プッシュ型: 生産コスト(原油や賃金など)の上昇が物価を押し上げます。ここで注意すべきは「賃金と物価の悪循環(wage-price spiral)」です!
2. ディマンド・プル型: 消費者がお金を持ちすぎていて、経済の供給能力を超えて購入しようとする状態。「少なすぎる財を、多すぎる金が追いかける」状態です。
インフレの測定
最も一般的な指標は消費者物価指数(CPI)です。典型的な消費者が購入する「買い物カゴ」の中身のコストを追跡します。
\[ \text{CPI} = \frac{\text{当年の買い物カゴの価値}}{\text{基準年の買い物カゴの価値}} \times 100 \]
よくある間違い: 「総合インフレ率(Headline Inflation)」と「コアインフレ率(Core Inflation)」を混同しないでください。コアインフレ率は、価格変動が激しすぎる食品とエネルギーを除外して算出します。
6. 景気指標:未来を予測する
アナリストは、景気の現在地を探るために「指標」を使います。経済の天気予報のようなものだと考えてください。
- 先行指標(Leading Indicators): 経済が動く「前」に変化します。
例: 株価、建築許可件数、製造業の平均週労働時間。 - 一致指標(Coincident Indicators): 経済と「同時」に動きます。
例: GDP、個人所得、小売売上高。 - 遅行指標(Lagging Indicators): 経済が変化した「後」に変化します。
例: 失業率、在庫対売上高比率、銀行のプライムレート。
ヒント: 試験で「転換点を予測する指標は?」と聞かれたら先行指標を、「既に起こった変化を確認する指標は?」と聞かれたら遅行指標を選びましょう。
最後に
これで景気循環の基本はマスターしました!CFA試験では、これらの概念の関係性を問う問題が頻出です。例えば「在庫の増加がなぜ生産削減につながるのか」や「なぜ回復が始まっても失業率が高いままなのか」といった論理的つながりです。このつながりを繰り返し確認すれば、きっと合格に近づけます!
重要ポイントまとめ:
- 拡大期 = 在庫は減少し、雇用がゆっくり始まり出す。
- 山 = 在庫が増加し、インフレ率が上昇し始めることが多い。
- 後退期 = GDPが下落し、循環的失業が増加する。
- 谷 = 経済が底を打ち、再び息を吹き返し始める。