死亡損益へようこそ!
これまでのCM1の学習で、皆さんは死亡率の仮定に基づいて保険料や責任準備金を計算する方法を学んできました。では、その仮定が現実と一致しなかったらどうなるでしょうか?この章のテーマはまさにそれです!
ここでは、生命保険会社が被保険者の死亡という事象に対して負う「リスク」をどのように測定し、実際の死亡状況に基づいて利益が出たのか、それとも損失が出たのかをどのように計算するのかを見ていきます。最初は少し抽象的に感じるかもしれませんが、心配はいりません。DSAR、EDS、ADS、そして死亡損益(Mortality Profit)という4つのシンプルな概念に分解して解説します。
1. 危険保障額 (DSAR: Death Strain at Risk)
危険保障額 (DSAR)とは、保険契約者が死亡した瞬間に保険会社が被る「金銭的な打撃」だと考えてください。
保険契約者が死亡すると、会社は保険金 (S)を支払わなければなりません。しかし、会社はすでにその人のために責任準備金 (Reserve)を積み立てているため、全額を「損失」として被るわけではありません。DSARとは、支払う金額と、すでに用意していた金額との差額に過ぎないのです。
公式:
保険期間の \((t+1)\) 年目におけるDSAR:
\(DSAR = S - {}_{t+1}V\)
ここで:
\(S\) = 死亡時に支払われる保険金。
\({}_{t+1}V\) = 年末時点で保持している責任準備金(被保険者が生存していると仮定)。
身近な例え:
1,000ポンドの新しいノートパソコンを買うために貯金しているとしましょう。すでに銀行口座には800ポンドあります。もし今使っているパソコンが壊れて、今すぐ新しいものを買わなければならない場合、追加で必要になる「負担」は、すでに800ポンドが用意されているので、たったの200ポンドです。
クイックレビュー:
• 保険金が年度末に支払われる場合、DSARは \(S - {}_{t+1}V\) です。
• 死亡時に即時支払われる場合、通常は利息を考慮して式を調整しますが、核心となる概念は同じです。それは、支払額 - 責任準備金 です。
2. 予定死亡損 (EDS: Expected Death Strain)
年度が始まる前に、アクチュアリーはすべての契約者を見てこう問いかけます。「我々の死亡表に基づくと、今年度の死亡によってどれくらいの支払いが発生すると『予想』されるだろうか?」
これが予定死亡損 (EDS)です。これは、死亡率(被保険者が死亡する確率)に、死亡した際に会社が受ける打撃(DSAR)を掛け合わせたものです。
公式:
\(EDS = q_{x+t} \times DSAR\)
\(EDS = q_{x+t} \times (S - {}_{t+1}V)\)
重要なポイント:
EDSは死亡に対する「予算」のようなものです。誰がいつ死ぬかを正確に予測することはできませんが、何千もの契約を合わせれば、ある程度の平均的なコストを予想できるのです。
3. 実際死亡損 (ADS: Actual Death Strain)
年度末になると、アクチュアリーは予測を止め、実際のデータを確認します。実際死亡損 (ADS)は、実際に何が起こったかを表します。
計算方法:
• 年度末にその人が生存している場合: \(ADS = 0\)
• 年度中にその人が死亡した場合: \(ADS = DSAR = S - {}_{t+1}V\)
同じ内容の \(n\) 件の契約からなる大規模なグループの場合、合計ADSは、単純に実際の死亡人数に1契約あたりのDSARを掛けたものになります。
豆知識:
1人の被保険者にとって、ADSは常に「全額の打撃」か「ゼロ」のどちらかです。ADSがEDSと比較可能なスムーズな数値として見えてくるのは、大規模なグループ全体を俯瞰したときだけなのです。
4. 死亡損益 (Mortality Profit / Surplus)
さて、最も重要な部分です。結局、儲かったのでしょうか、それとも損をしたのでしょうか?死亡損益(死亡剰余金とも呼ばれます)は、「予算」(EDS)と「実際のコスト」(ADS)を比較することで計算します。
公式:
\(Mortality Profit = EDS - ADS\)
結果の読み方:
• 正の数: 利益 (Profit)です。これは \(EDS > ADS\) の場合(予想よりも死亡者が少なかった)に発生します。
• 負の数: 損失 (Loss)です。これは \(ADS > EDS\) の場合(予想よりも死亡者が多かった)に発生します。
暗記のコツ: "E before A"
順序を覚えるには、アルファベットを思い浮かべてください。Expected(予定)はActual(実際)の前に来ます。「予定」の予算額が「実際」のコストよりも多ければ、黒字(利益)です!
避けるべきよくある間違い:
学生は死亡損益と全体利益を混同しがちです。死亡損益は、あくまで死亡率の違いによって生じる差のみに注目します。金利や経費の違いは考慮しません。これらの問題を解くときは、DSARにのみ集中してください!
5. ステップ・バイ・ステップ: グループの死亡損益を計算する
契約者グループに関する問題が出た場合は、以下の手順に従ってください:
1. 責任準備金を計算する: 1契約あたりの \({}_{t+1}V\) を求めます。
2. DSARを計算する: 保険金額から責任準備金を引きます (\(S - {}_{t+1}V\))。
3. 合計EDSを計算する: DSARに予想死亡数を掛けます(契約件数 \(\times q_{x+t} \times DSAR\))。
4. 合計ADSを計算する: DSARに実際の死亡者数を掛けます。
5. 引き算をする: \(合計EDS - 合計ADS = 合計死亡損益\)。
まとめテーブル
DSAR: 「ギャップ」 (\(S - V\))
EDS: 「仮定」 (\(q \times DSAR\))
ADS: 「現実」 (実際の死亡数 \(\times DSAR\))
死亡損益: 予定 - 実際 (\(EDS - ADS\))
応援メッセージ: あなたなら大丈夫です!死亡損益は、私たちの計算を確認するための単なる手段に過ぎません。責任準備金を計算でき、\(q_x\) の値がわかっていれば、もう90%は達成したようなものです!