純保険料と責任準備金入門
これまでの章では、保険会社がどのように営業保険料(グロス保険料)を計算するかを見てきました。これは、給付の保障、諸経費、そしてわずかな利益を含んだ、契約者が実際に支払う金額のことです。この章では、それらを一旦すべて削ぎ落として、純保険料と純保険料式評価について深く掘り下げていきます。
純保険料は、保険の「純粋な」コストだと考えてください。これは、約束された給付をカバーするためだけに必要な金額であり、手数料やオフィスの賃料、マーケティング費用などは一切考慮されていません。保険会社が実際に純保険料のみの保険を販売することはありませんが、この概念は責任準備金(将来の保険金支払いのために積み立てておくお金)を計算する上で極めて重要であり、企業の健全性(ソルベンシー)を維持するために規制当局から算出を求められることも多いものです。
1. 純保険料とは何か?
純保険料は等価の原則を用いて計算されますが、一つ大きなルールがあります。それは、「諸経費は無視する」ということです。
基本となる方程式は以下の通りです:
\(PV(\text{Net Premiums}) = PV(\text{Benefits})\)
例:終身保険
年齢 \(x\) の者に対し、死亡した年度の末に 1 の保険金を支払う終身保険において、生存中、期首払いで毎年支払われる年額 \(P\) の純保険料は次のようになります:
\(P \cdot \ddot{a}_x = A_x\)
\(\implies P = \frac{A_x}{\ddot{a}_x}\)
ヒント: 試験問題で「純(Net)」という言葉を見かけたら、頭の中の「費用アラーム」をオフにしてください!維持費や初期手数料、保険金支払い経費について心配する必要はありません。
2. 純保険料式評価(責任準備金の積み立て)
責任準備金とは、保険会社が将来の義務を果たすために、現時点で保持していなければならない金額のことです。純保険料式評価とは、純保険料と給付のみを用いてこの準備金を計算することを意味します。
将来法による純保険料式責任準備金
これは最も一般的な方法です。将来を見通して次のように計算します:
\(\text{Reserve} = PV(\text{Future Benefits}) - PV(\text{Future Net Premiums})\)
年齢 \((x)\) で契約した保険金額 1 の終身保険について、\(t\) 時点における純保険料式責任準備金(\({}_tV\) と表記)は以下の通りです:
\({}_tV = A_{x+t} - P \cdot \ddot{a}_{x+t}\)
過去法による純保険料式責任準備金
これは、保険開始から現在までに何が起こったかを振り返る方法です:
\(\text{Reserve} = \text{Accumulated Value of Past Net Premiums} - \text{Accumulated Value of Past Benefits}\)
最初は難しく感じるかもしれませんが、大丈夫です... 基礎率(予定利率や予定死亡率)が保険料計算時と変わらない「純(Net)」の世界では、将来法と過去法は常に全く同じ答えになります!
3. 純保険料式と営業保険料式評価の比較
純保険料式責任準備金が、以前学習した営業保険料式責任準備金とどのように関連しているかを理解することが重要です。
営業保険料式責任準備金に含まれるもの:
1. 将来の給付
2. 将来の諸経費
3. 将来の営業保険料(実際に支払われる金額)
純保険料式責任準備金に含まれるもの:
1. 将来の給付
2. 将来の純保険料
なぜ純保険料式評価を用いるのか?
- 一貫性: 異なる保険会社間を比較するための標準化された方法を提供します。
- 保守性: 規制当局はしばしばこの方法を好みます。なぜなら、営業保険料に含まれる将来の潜在的な利益を現時点の会計に「前倒し」で計上することを防げるからです。
- 簡便性: 将来のインフレ連動型の諸経費や複雑な手数料体系を予測・見積もる必要がありません。
4. 重要な関係式と記号
CM1では、純保険料式責任準備金の公式を操作する場面が頻繁にあります。終身保険の責任準備金に関する最も有名な恒等式の一つがこちらです:
\({}_tV = 1 - \frac{\ddot{a}_{x+t}}{\ddot{a}_x}\)
この公式が美しいのは、準備金が「契約時の年齢」と「現在の年齢」における年金現価のみに依存することを示している点です。被保険者が高齢になる(\(x+t\) が大きくなる)につれて、年金現価 \(\ddot{a}_{x+t}\) は小さくなり、その結果として分数が小さくなるため、責任準備金 \({}_tV\) が 1(保険金額)に向かって成長していく様子が見て取れます。
5. まとめとクイックレビュー
この章をマスターするために、次の3つのステップを確実に押さえましょう:
- 純保険料を計算する: すべての諸経費を無視して、\(PV(\text{Premiums}) = PV(\text{Benefits})\) を使います。
- 方法を選択する: 通常は将来法(将来の給付現価 - 将来の純保険料現価)を使用します。
- 評価を実施する: 評価日時点での被保険者の年齢(例:\(x+t\))を使用します。
重要用語の復習:
純保険料: 給付コストのみを反映した純粋な保険料。
等価の原則: 契約当初において純現在価値(NPV)が 0 になるように純保険料を設定する基本原則。
純保険料式評価: 諸経費を無視し、営業保険料の代わりに純保険料を用いる責任準備金の算出方法。
注:これらの準備金が年々どのように変化するかについての詳細は、「責任準備金の再帰的関係」の章を参照してください。また、これらの準備金と比較した実際の損益を計算する方法については、「死差損益(Death strain at risk and mortality profit)」を参照してください。