最終利回り(YTM)とパー・イールド入門
「期間構造、デュレーション、イミュニゼーション」のセクションの前章では、投資期間によって金利がどのように変化するか(期間構造)を見てきました。スポット・レートやフォワード・レートを学び、個々のキャッシュフローを正確に評価する方法を探りましたね。
しかし、現実の世界では、投資家は債券やプロジェクトの収益性を表す「要約された」単一の数値を求めることがよくあります。そこで登場するのが、最終利回り(Yield to Maturity: YTM)とパー・イールド(Par Yield)です。これらの概念は、複雑なスポット・レートと、市場で見られる実際の価格との架け橋となります。最初は少し抽象的に感じるかもしれませんが、大丈夫です。単純な価値方程式に分解して考えていきましょう!
注:この章では、価値方程式の概念とスポット・レートの基本的な定義を理解していることを前提としています。
最終利回り(Yield to Maturity: YTM)
最終利回り(償還利回りとも呼ばれます)とは、債券から得られる将来のすべてのキャッシュフローの現在価値と、現在の市場価格を等しくさせる単一の一定な年換算実効金利のことです。
債券の「内部収益率(IRR)」だと考えてみてください。今日債券を購入し、満期まで保有し、すべてのクーポン(利息)を同じ利率で再投資した場合、YTMはあなたが達成する年間収益率となります。
YTMの価値方程式
債券の価格を \(P\)、年間のクーポンを \(C\)、時点 \(n\) における償還価格を \(R\) とすると、YTM(ここでは \(y\) とします)は以下の方程式の解となります:
\(P = C \cdot a_{\overline{n}|y} + R \cdot v_y^n\)
ここで:
- \(a_{\overline{n}|y} = \frac{1 - (1+y)^{-n}}{y}\)
- \(v_y = (1+y)^{-1}\)
重要な違い: 各年のキャッシュフローに対して異なる金利を適用するスポット・レートとは異なり、YTMはキャッシュフローが発生するタイミングにかかわらず、すべてのキャッシュフローに対して同じ利率 \(y\) を使用します。
なぜYTMを使うのか?
これは、ニュースや取引現場で債券の収益率を提示する際の標準的な方法です。これにより、投資家はクーポンレートが異なる5年債と10年債であっても、単一のパーセンテージを使って比較することができます。
ここがポイント: YTMは、債券の現在の市場価格から示唆される「平均的な」金利です。価格が上がれば、YTMは下がります。
パー・イールド(Par Yield)
パー・イールドとは、債券の市場価格がその額面(パー)価格とちょうど等しくなるような特定のクーポンレートのことです。言い換えれば、債券が「パーで取引されている」場合、その価格は額面金額の100%になります。
アクチュアリー試験では、与えられたスポット・レートのセットに基づいて、特定の期間 \(n\) のパー・イールドを計算するよう求められることがよくあります。
パー・イールドの論理
額面が1の債券を想像してください。この債券は \(n\) 年間、各年末にクーポン \(c\) を支払い、\(n\) 年目の終わりに1を払い戻します。この債券の今日の価値がちょうど1であるためには、これらの支払いの現在価値(スポット・レートを使用して計算)の合計が1に等しくなければなりません。
\(1 = c \cdot v(0,1) + c \cdot v(0,2) + \dots + (c+1) \cdot v(0,n)\)
ここで、\(v(0,t)\) は、その特定の期間のスポット・レートを使用して計算された、時点 \(t\) に支払われる1の現在価値です。
パー・イールド(\(c_n\))の計算
上記の方程式を整理すると、パー・イールド \(c_n\) を求めることができます:
\(1 = c_n \sum_{t=1}^{n} v(0,t) + v(0,n)\)
\(c_n = \frac{1 - v(0,n)}{\sum_{t=1}^{n} v(0,t)}\)
ご存知でしたか? イールドカーブがフラット(つまり、すべてのスポット・レートが同じ)である場合、パー・イールドはそのスポット・レートと完全に一致します!
ここがポイント: パー・イールドは「損益分岐点」となるクーポンレートです。債券の実際のクーポンがパー・イールドよりも高ければ、その債券はプレミアム(価格 > 100)で取引されます。クーポンが低ければ、ディスカウント(価格 < 100)で取引されます。
YTMとパー・イールドの比較
この2つは混同しやすいですが、違いを覚える簡単な方法があります:
- 最終利回り(YTM): 「価格」と「クーポン」は分かっていて、「利率」を求めます。
- パー・イールド: 「スポット・レート(利率)」は分かっていて、「価格」を100に設定したときの「クーポンレート」を求めます。
イールドカーブとの関係
パー・イールドは、異なる満期のパー・イールドをプロットした「パー・イールドカーブ」を作成するのに便利なツールです。実務家にとっては、多くの債券が額面に近い価格で発行されるため、スポット・レート・カーブよりも観察しやすいことが多いです。
重要公式のまとめ
1. 最終利回り(\(y\)): 未知の利率 \(y\) について価値方程式を解きます。
\(価格 = \sum 現価(利率 y を用いたキャッシュフロー)\)
2. パー・イールド(\(c_n\)): スポット・レートを用いて、価格 = 額面とするクーポンレートです。
\(c_n = \frac{1 - v(0,n)}{\sum_{t=1}^n v(0,t)}\)
クイックレビュー:よくある落とし穴
間違い1:年利と年\(p\)回払いの利率の混同
債券が半年ごとにクーポンを支払う場合、利回り計算を調整することを忘れないでください。\(y\) が年実効利回りである場合、半年ごとのクーポンは \((1+y)^{-0.5}\) で割り引く必要があります。ただし、試験範囲では特に指定がない限り、通常はこれらの定義に年1回のキャッシュフローを想定しています。
間違い2:スポット・レートとYTMの取り違え
覚えておきましょう:スポット・レートは「時点ごとに特定」のもの(1年目にはこの率、2年目には別の率)です。対してYTMは、特定の債券のすべての年数に適用される「単一の平均」です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、心配いりません! 最も重要なスキルは、価値方程式を正しく立てることです。方程式さえ正しく書ければ、あとは代数の計算か、電卓のソルバー機能や補間法を使うだけです。
最後に: これらの利回りは、債券の価格を収益率(パーセンテージ)という別の形で表現しているに過ぎません。これらをマスターすることは、後のデュレーションやイミュニゼーションのトピックを理解する上で不可欠です。