多変量変数の世界へようこそ!
これまでの確率の学習では、自動車保険の契約者が1年間に請求する件数のように、一度に1つの確率変数だけを扱うことが多かったはずです。しかし、現実の世界(そしてExam Pの本番!)では、物事は孤立して起こることはめったにありません。通常、私たちは一度に2つ以上の変数を扱います。例えば、保険会社は、ある一人の人物に関する自動車保険の請求件数と住宅保険の請求件数を同時に見ることがあります。
この章では、グループの中から1つの変数を「取り出す」方法(周辺確率)と、すでにある変数の情報を知っている場合に、もう一つの変数の知識を更新する方法(条件付き確率)を学びます。最初は難しく感じるかもしれませんが、大丈夫です。シンプルな表や例えを使って、ステップバイステップで紐解いていきましょう!
1. 全体像:離散型同時確率質量関数 (PMF)
周辺確率や条件付き確率に入る前に、離散型変数の場合は同時確率質量関数 (Joint PMF) を使うことを思い出してください。これは \( p(x, y) = P(X = x, Y = y) \) と表記されます。これは、グリッドや表のようなもので、各セルが \( X \) と \( Y \) が同時に起こる確率を表していると考えてください。
2. 周辺確率関数:「合計」を求める
ある人が \( X \) 匹の犬と \( Y \) 匹の猫を飼っている確率を示す表があると想像してください。「猫を何匹飼っているかは無視して、ある人が犬を2匹飼っている確率は?」と聞かれたら、それは \( X \) の周辺確率を求めていることになります。
\( X \) の周辺確率を求めるには、単に \( X = x \) となる行(または列)のすべての確率を合計するだけです。つまり、興味のない変数を「合計して消し去る」という作業を行っているのです。
公式:
\( X \) の周辺PMFを求めるには:
\( p_X(x) = \sum_{all y} p(x, y) \)
\( Y \) の周辺PMFを求めるには:
\( p_Y(y) = \sum_{all x} p(x, y) \)
簡単な例え:
スプレッドシートを思い浮かべてください。同時確率はスプレッドシートの中央にある数値です。周辺確率は、行と列を合計した後に余白(マージン)(右端や一番下)に書かれる合計値です。まさにこれが「周辺(marginal)」確率と呼ばれる理由なのです!
クイック復習:周辺確率のルール
1. 周辺確率 \( p_X(x) \) は常に0から1の間でなければなりません。
2. \( X \) のすべての周辺確率を合計すると、必ず1になります。( \( \sum p_X(x) = 1 \) )
3. 条件付き確率関数:焦点を絞る
条件付き確率は、新しい情報を扱うためのものです。「この人がちょうど1匹の猫を飼っているという条件の下で、犬を2匹飼っている確率は?」と言われたら、可能性の「世界(ユニバース)」が変わります。もはや猫を0匹や2匹飼っている人のことは考えなくて良いのです。「猫1匹」の行だけが重要になります。
公式:
\( Y=y \) が与えられたときの \( X \) の条件付きPMFは:
\( p_{X|Y}(x|y) = P(X=x | Y=y) = \frac{p(x, y)}{p_Y(y)控え} \)
注意:この公式は \( p_Y(y) > 0 \) の場合にのみ成立します。確率が0%の事象を条件にすることはできません!
ステップごとの解説:
1. 「条件」を特定する:真であると与えられた変数の値(例: \( Y = y \) )に注目します。
2. 「切り出し」を行う:同時確率の表の中で、その値に対応する行または列だけを見ます。
3. 再スケーリング:そのセルの同時確率を、行または列全体の合計(周辺確率)で割ります。これにより、新しい「条件付き」確率の合計が必ず1になるよう調整されます。
避けるべきよくあるミス
学生はよく周辺確率で割るのを忘れてしまいます。覚えておいてください:条件付き確率分布も一つの有効な確率分布です。周辺確率で割るのを忘れると、確率の合計が1にならなくなってしまいます!
4. 離散型における独立性
2つの変数 \( X \) と \( Y \) が全く無関係であるとどうやって判断するのでしょうか?確率の言葉では、これらを独立であると言います。
判定方法:
\( X \) と \( Y \) が独立であるための必要十分条件は:
\( p(x, y) = p_X(x) \cdot p_Y(y) \)
がすべての \( (x, y) \) のペアで成り立つことです。
あるいは、条件付き確率が周辺確率と等しい場合も独立と言えます:
\( p_{X|Y}(x|y) = p_X(x) \)
豆知識:同時確率の表の中で、一つでも \( p(x,y) \neq p_X(x)p_Y(y) \) となるセルを見つけたら、その変数は従属(独立ではない)です!最初の方で一つでも一致しない場所を見つければ、表全体をチェックする必要はありません。
5. 例題の解説
\( X \) (事故件数)と \( Y \) (車両台数)の同時PMFの表を見てみましょう:
\( X=0, Y=1: 0.40 \)
\( X=0, Y=2: 0.10 \)
\( X=1, Y=1: 0.20 \)
\( X=1, Y=2: 0.30 \)
タスク1:周辺確率 \( p_X(1) \) を求めよ。
\( X=1 \) となる確率を合計します:
\( p_X(1) = P(X=1, Y=1) + P(X=1, Y=2) = 0.20 + 0.30 = 0.50 \)。
タスク2:条件付き確率 \( P(Y=2 | X=0) \) を求めよ。
まず、周辺確率 \( p_X(0) \) を求めます:
\( p_X(0) = 0.40 + 0.10 = 0.50 \)。
次に、公式を使います:
\( P(Y=2 | X=0) = \frac{P(X=0, Y=2)}{p_X(0)} = \frac{0.10}{0.50} = 0.20 \)。
まとめと重要ポイント
1. 周辺確率:「合計」と考えること。消したい変数に沿って足し合わせる。
2. 条件付き確率:「切り出し」と考えること。同時確率を「条件となっている」周辺確率で割る。
3. 独立性:同時確率が2つの周辺確率の積であれば、変数は互いに影響しない。
4. 検算:ある変数の周辺確率は合計が1になるはず。また、特定の条件に対する条件付き確率の合計も必ず1になる。
総和の記号が難しそうに見えても心配しないでください。周辺確率は表の「余白」の合計であり、条件付き確率は特定の行や列を「ズームイン」して見たものに過ぎないのです!