N5文法コース、パート2:動詞フォームのエンジン
パートAでは助詞と文の枠組みを学びました。パートBはエンジンの心臓部です。N5の文法事項のほとんどが、4つの動詞フォーム(て形、ない形、た形、普通形(辞書形))をベースに構成されています。この4つの変換ルールさえ習得すれば、約40個の文法ポイントをパーツのように当てはめるだけで使えるようになります。この章では、有名な「星印」の並べ替え問題である「問題2(文の組み立て)」を、確実な3ステップ法で解く練習も行います。
1. て形:一つの変換で10個の文法ポイント
て形は、日本語の連結の役割を果たす形です。変換ルール(おなじみのリズムで覚えましょう):
| グループ | 語尾 | ルール | 例 |
|---|---|---|---|
| グループ1(u動詞) | う・つ・る | → って | 買う→買って, 待つ→待って, 乗る→乗って |
| ぬ・ぶ・む | → んで | 死ぬ→死んで, 遊ぶ→遊んで, 飲む→飲んで | |
| く/ぐ | → いて/いで | 書く→書いて, 泳ぐ→泳いで(例外: 行く→行って!) | |
| す | → して | 話す→話して | |
| グループ2(ru動詞) | る | → て | 食べる→食べて, 見る→見て, 起きる→起きて |
| 不規則動詞 | — | 暗記 | する→して, 来る→来て(きて) |
て形ファミリー(すべてN5の試験範囲)
| パターン | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ~てください | ~してください | ここに名前を書いてください。 |
| ~てもいい(ですか) | ~てもよい/~てもよいですか? | ここで写真を撮ってもいいですか。 |
| ~てはいけません | ~てはいけない | ここに車を止めてはいけません。 |
| ~ちゃいけない/じゃいけない | ~てはいけない(話し言葉の短縮形) | ここで遊んじゃいけないよ。 |
| ~ています | ~している/状態/習慣 | 今、雨が降っています。/結婚しています。/銀行で働いています。 |
| ~てあります | ~てある(誰かが行った状態) | 壁に絵がかけてあります。 |
| ~てから | ~てから | 手を洗ってから、食べます。 |
| て、て、… | 動作の順序 | 朝起きて、シャワーをあびて、学校へ行きます。 |
ていますには3つの側面があり、試験ではすべて問われます。動作の進行(降っています)、結果の状態(結婚しています — 「結婚しようとしている」ではなく「既婚である」)、習慣(毎朝走っています)。また、まだ+〜ていませんは「まだ~していない」という意味です:昼ごはんはまだ食べていません。試験では「もう+〜ました(既に~した)」との組み合わせが、極性(肯定・否定)を問う典型的なひっかけとして出題されます。
2. ない形:義務と禁止
作り方:グループ1 — 最後のuをaに変えてないをつける(書く→書かない; 買う→買わない!); グループ2 — る→ない(食べない); する→しない, 来る→来ない(こない).
| パターン | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ~ないでください | ~しないでください | ここでタバコを吸わないでください。 |
| ~ないで(+動作) | ~しないで~する | 朝ごはんを食べないで学校へ来ました。 |
| ~なくてもいいです | ~なくてもよい | あしたは来なくてもいいです。 |
| ~なくてはいけません | ~なければならない | 毎日薬を飲まなくてはいけません。 |
| ~なくてはなりません | ~なければならない(より硬い表現) | 今晩レポートを書かなくてはなりません。 |
| ~ないといけません | ~なければならない(よく使われる話し言葉) | もう帰らないといけません。 |
| ~なくちゃ | ~なくちゃ(カジュアルな短縮形) | もう行かなくちゃ。 |
| ~な(辞書形+な) | ~するな(強い禁止 — 看板や怒った時の口調) | ここに入るな。 |
「義務」を表す4つの表現(なくてはいけない/なくてはならない/ないといけない/なくちゃ)はすべて同じ意味です。試験では使い分けではなく、正しく形作れるかが問われます。ない形から作りましょう:飲まない → 飲まなくては → 飲まなくてはいけません。そして論理マップを整理しましょう:てもいい = 許可、なくてもいい = 不必要、てはいけない = 禁止、なくてはいけない = 義務。 2軸の4象限です。一度図に描けば、もう混乱することはありません。
3. た形:経験と列挙
作り方:て形のteをtaに変えるのと全く同じです(買って→買った, 飲んで→飲んだ, 食べて→食べた)。
| パターン | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ~たことがあります | ~たことがある(経験) | 富士山に登ったことがあります。 |
| ~たり~たりします | ~たり~たりする(例示) | 休みの日は本を読んだり、音楽を聞いたりします。 |
| ~たほうがいいです | ~したほうがよい(助言) | 早く寝たほうがいいですよ。 |
試験で好まれる対比:日本へ行きました(行ったという過去の事実) vs 日本へ行ったことがあります(行ったという人生経験)。また、たり…たりは「他にも色々ある中の例」を挙げます。順番通りに動作を並べる「て、て」とは異なります。
4. 普通形:より高度な文法の基礎
普通形(辞書形 行く、ない形 行かない、た形 行った、ない過去形 行かなかった)は、以下のN5パターンを作るために必要です:
| パターン | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 辞書形+前に | ~する前に | 寝る前に歯をみがきます。 |
| 普通形+とき | ~とき | 子どものとき、大阪に住んでいました。/出かけるとき、電気を消します。 |
| 辞書形+つもりです | ~するつもりです | 夏休みに国へ帰るつもりです。 |
| ~でしょう/だろう | ~でしょう(推測の調子) | あしたは晴れるでしょう。 |
| 辞書形+の+が好き/上手/下手 | ~するのが好き/上手/下手 | 音楽を聞くのが好きです。/歌うのが下手です。 |
| ます形(stem)+に行きます | ~しに行く | デパートへかばんを買いに行きます。 |
名詞化の「の」に注目してください。動詞のフレーズを名詞に変えることで、「~が好き」という文法に繋げられます。これはN4からN1にかけて広がる巨大な文法ファミリーのN5における種となります。また、買いに行くは、ます形の語幹(stem)を使います:買います→買い+に行く、見ます→見に行く、食べます→食べに行く。
5. 節の接続
| パターン | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ~から | ~から(話し手の理由) | 暑いですから、窓を開けてください。 |
| ~ので | ~ので(より柔らかく、客観的) | 雨が降っているので、家にいます。 |
| ~が | ~が(丁寧な節の接続) | すみませんが、もう一度おねがいします。 |
| ~けど/けれども | ~けど、~けれども(カジュアル/より柔らかい) | 高いけど、おいしいです。 |
文頭の接続詞(そして、それから、でも、しかし、では…)は文章レベルの文法に属するため、次の「文章の文法」の章で詳しく扱います。
6. 問題2 文の組み立て:星印問題の解き方
形式:4つの空欄を持つ文「__ __ _★_ __」と、バラバラになった4つの断片。正しい文を頭の中で組み立て、★に入る断片はどれか(通常は3番目の空欄)を答えます。以下の3ステップで解きます:
- 文法の枠組みを見つける。断片の中に、必ずつながるペアを探します。て形なら後ろにください/もいいが来ます。辞書形なら前に/つもり、のほうがならよりが来ます。枠組みが分かれば2~3個の断片が即座に繋がります。
- 助詞で塊(チャンク)を作る。助詞は左側の言葉と結びつきます:[友だちと]、[映画を]、[見に]。塊を作ってから、自然な文の骨格である[トピック][時][場所][対象][動詞]の順に並べます。
- 文全体を黙読してから、★の断片を選ぶ。最初に置いた断片を答えてはいけません!不注意な受験者は文を正しく組み立てても、違う空欄を答えてしまいます。先に★の位置を確認してから進みましょう。
練習問題
私は __ __ _★_ __ ことがあります。
断片: ① 日本の ② 映画を ③ 見た ④ 友だちと
枠組みを見つける:「ことがあります」の前には「た形」が必要です(経験!)。なので「見た(③)」が最後の空欄に入ります。助詞で塊を作る:[友だちと] [日本の] [映画を]。組み立て:友だちと(④) 日本の(①) 映画を(②) 見た(③) ことがあります — 「私は友だちと日本の映画を見たことがあります」。★は3番目の空欄なので → ② 映画を。まず組み立ててから、星の場所を確認してください。答えは「場所」であって「なんとなく」ではありません。
7. 問題1でのパートBの出題例
ここでたばこを( )ください。
① すって ② すわないで ③ すいながら ④ すった → ②: 「ここでタバコを吸わないでください」 — ないで+ください。
日本のりょうりを( )ことがありますか。
① 作る ② 作った ③ 作り ④ 作って → ②: 経験 = た形+ことがある。
もう昼ごはんを食べましたか。— いいえ、( )。
① もう食べました ② まだ食べていません ③ まだ食べました ④ もう食べていません → ②: 「もう」と「まだ」の極性のペア。
まとめと重要ポイント
- 4つの変換が約40の文法ポイントを支えています:て(って/んで/いて/してのルール、行っての例外)、ない(u→a+ない、買わない)、た(て形と同じでtaに変える)、普通形。
- て形ファミリー:ください、てもいい、てはいけない、ています(3つの意味:進行・状態・習慣)、てある、てから。許可のコンパス:てもいい/なくてもいい/てはいけない/なくてはいけない。
- た形ファミリー:たことがある(経験)、たり~たり(例示)、たほうがいい(助言)。
- 普通形ファミリー:前に、とき、つもり、でしょう、のが好き/上手/下手;目的を表す「ます形(語幹)+に行く」。
- から(主観的な理由)とので(客観的な理由)はどちらも理由を表し、が/けどは対比を繋ぎます。
- 問題2の解法:枠組みを見つける → 助詞で塊を作る → 文全体を組み立てる → 最初の配置ではなく、★の位置を答える。