N5 文章の文法:文章全体の文法

最初の2つの文法セクションでは、文単位での文法を扱いました。文章の文法(ぶんしょうのぶんぽう)では、視野を広げます。これは、複数の文がつながっている文章(短い日記、手紙、あるいは4つの空欄があるミニエッセイなど)で、文法を正しく使えるかを試すものです(問題3)。ここで必要なスキルは、文と文をつなぐ適切な接続詞を選ぶこと、指示語(それ、その…など)が何を指しているかを追うこと、そして文章の中でトピックがどのように目に見えない形で引き継がれているかを感じ取ることです。これらはまさに読解セクションに必要なスキルであり、この章は読解へ向かうための架け橋となります。

1. 接続詞:文章の交通信号

日本語では、文と文の間に接続詞を置いて、その関係性を示します。これらを交通信号のように覚えましょう。それぞれが、読み手に対して文章がどちらへ向かうのかを教えてくれます。

接続詞信号の役割
そして並列・添加(スムーズに追加)朝ごはんを食べました。そして、学校へ行きました。
それから順序(次に起こること)宿題をしました。それから、テレビを見ました。
でも逆接(カジュアルな転換)ケーキが好きです。でも、今日は食べません。
しかし逆接(フォーマルな転換)行きたかったです。しかし、時間がありませんでした。
だから結果(結論を導く)雨が降っています。だから、タクシーで行きます。
それで結果(自然な成り行き)かぜをひきました。それで、学校を休みました。
では/じゃあ話題の転換・締めくくりでは、始めましょう。
たとえば例示日本の食べ物が好きです。たとえば、すしやてんぷらです。

試験の重要ポイント:空欄の前後の文を読み、同じ方向(そして/それから)なのか、逆の方向(でも/しかし)なのか、原因から結果への流れ(だから/それで)なのかを考えましょう。接続詞は「感覚」ではなく「論理」で選ぶものです。

2. 指示語:文章の代名詞

つながった文章の中では、「こそあど」言葉は物理的なモノを指すのではなく、すでに言及されたモノを指すようになります。

  • それ/これ — 「それ(今言ったこと)」:先週、映画を見ました。それはとてもおもしろかったです。
  • その+名詞 — 「その〜(今言った名詞)」:きのう、新しい店に行きました。その店のパンはおいしかったです。
  • そこ — 「そこ(今言った場所)」:図書館へ行きました。そこで三時間勉強しました。

文章を書く際、そ-系列がほとんどの指示の役割を果たします(あ-系列は会話の中で共有された思い出などに使われます)。問題3では、空欄にこれ/それ/あれが入る選択肢が出題されます。前の文の内容を指すときはそ-系列を選びましょう。「具体的に何を指しているか?」と自分に問いかけてみてください。指している対象(先行詞)を特定できれば、正解にたどり着けます。

3. 省略されたトピック:隠れた主語を追う

初級日本語で学んだ通り、日本語では自明な主語は省略されます。文章中では、1つの「は」が多くの文のトピックを決定します。

わたしの兄は東京に住んでいます。(兄は)銀行で働いています。(兄は)毎朝六時に起きて、(兄は)七時の電車に乗ります。

括弧の中の「兄は」は目に見えませんが、確実に存在しています。問題3の空欄では、トピックが設定されてから3文経った後でも、誰が行動しているのかを把握できているかが問われることがよくあります。特に、書き手が「わたし」と「他の人」を切り替えるときは注意が必要です。新しい「は」が出てくるたびに立ち止まりましょう。それが、その後に続くすべての「目に見えない主語」を変えてしまうからです。

4. 時間の流れと時制の一致

日記や手紙の文章は時間経過とともに進むため、空欄には時間語と一致する時制が必要です。

  • きのう…( )→ 過去:行きました/見ました
  • 毎日…( )→ 習慣:行きます/〜ています
  • あした…( )→ 非過去(または予定や希望を表す つもりです/〜たいです)

また、から/のでの方向性にも注意しましょう。「原因」が前、「結果」が後です。空欄の直後に結果が来るなら、空欄には「から」や「ので」が入る可能性が高いです。

5. 手紙や日記の決まり文句(N5の文章の枠組み)

問題3の文章は、日記、手紙、あるいは学生による短い作文として構成されることが一般的です。その「型」を覚えましょう。

  • 手紙は季節の挨拶や健康を尋ねる言葉(お元気ですか。わたしは元気です。)で始まり、結びの言葉(またお手紙を書きます。/お体に気をつけてください。)で終わります。
  • 日記は「今日は…、それから…、とても楽しかったです。」といった単純な時間軸を使います。
  • 作文は「トピック → 詳細 → 感想」の流れです。(例:わたしの家族について書きます。…(詳細)…これからもみんなで旅行したいです。)

6. 練習問題(試験シミュレーション)

以下の文章を読みましょう。空欄は番号で示されています。回答してから、下の解説を確認してください。

わたしは先週の日曜日、友だちと海へ行きました。朝は天気がよかったです。【1】、午後から雨が降りました。【2】、わたしたちは早くうちへ帰りました。
電車の中で、友だちは「来月また行きましょう」と言いました。わたしも【3】行きたいです。今度は母も【4】つもりです。

  1. 前:天気がよかった。後:雨が降った。逆の方向 → でも(あるいは「しかし」 — 試験ではどちらか一方の転換信号が出題されます)。
  2. 前:雨が降った。後:早く帰った。原因→結果 → だから/それで
  3. 友だちが「また行きましょう」と言ったのに対して、自分も「また」行きたい → わたしもまた行きたいです。
  4. 今度の計画:母を「つれて行く」つもり、あるいは「いっしょに行く」つもりなど。「〜つもりです」の直前は辞書形になることを認識しましょう。

すべての答えが文と文の関係性から導き出されたことに注目してください。空欄のある文だけで判断してはいけません。それが「文章の文法」の真髄です。

7. 問題3のための戦略チェックリスト

  • 答えを選ぶ前に、まずは文章全体を読みましょう。わずか5〜8文程度です。最初に30秒使うだけで、すべての空欄の正解率が上がります。
  • 接続詞の空欄:隣り合う2つの文から、話の転換(順接・逆接・因果・例示)を分類しましょう。
  • 指示語の空欄:指している対象(先行詞)を頭の中で言葉にしてみましょう。文章中では基本的に「そ-系列」を使います。
  • 動詞の形の空欄:時間語と時制を合わせ、空欄の直後の文法構造(つもり、たいです、〜ましょう)に隠れているヒントを確認しましょう。
  • 4問=約5分(読み通しの時間を含む)が目安です。

まとめと重要ポイント

  • 文章の文法は、文文の間の文法(接続詞、指示語、隠れた主語、時制の流れ)をテストします。
  • 接続詞は信号です:そして/それから(継続)、でも/しかし(転換)、だから/それで(結果)、では(切り替え)、たとえば(例示)。
  • 文章中の指示語は、基本的にそ-系列であり、直前に言及されたことを指します。常に先行詞を特定しましょう。
  • 一つの「は」が多くの文を支配します。文章全体を通して、目に見えない主語を追いかけましょう。
  • 空欄の時制は時間語と一致させ、直後の形を決定する文法(〜つもり、〜ましょう)を見逃さないようにしましょう。
  • これらは「読解力」のミニチュア版です。次の3つの章では、これらをより長い文章に応用していきます。