高校数学Ⅲ【積分法】完全攻略ノート
数学Ⅱで学んだ積分法は、主に整関数(\(2\)次関数や\(3\)次関数など)が対象でした。数学Ⅲの積分法では、これまでに学んだ三角関数・指数関数・対数関数・分数関数・無理関数など、あらゆる関数を積分していきます。
「覚える公式が多くて大変そう…」と最初は難しく感じるかもしれませんが、大丈夫です!積分の本質は「微分の逆の計算」と「細かく分けて足し合わせること」です。基本的な仕組みとパターンの見極め方を身につければ、パズルを解くように楽しく計算できるようになります。一歩ずつ着実に進めていきましょう。
※なお、本章では「極限」や「微分法」で学んだ導関数の知識を前提として活用します。
1. 不定積分の基本と各種関数の公式
関数 \(F(x)\) の導関数が \(f(x)\) であるとき、すなわち \(F'(x) = f(x)\) のとき、\(F(x)\) を \(f(x)\) の原始関数と呼びます。原始関数に積分定数 \(C\) を加えたものを不定積分といい、記号 \(\int\) を用いて次のように表します。
\(\int f(x) dx = F(x) + C\) (\(C\) は積分定数)
いろいろな関数の不定積分公式
・べき関数 \(x^\alpha\) の積分
\(\alpha \neq -1\) のとき:\(\int x^\alpha dx = \frac{1}{\alpha + 1} x^{\alpha + 1} + C\)
\(\alpha = -1\) のとき:\(\int \frac{1}{x} dx = \log |x| + C\)
・三角関数の積分
\(\int \sin x dx = -\cos x + C\)
\(\int \cos x dx = \sin x + C\)
\(\int \frac{1}{\cos^2 x} dx = \tan x + C\)
・指数関数の積分
\(\int e^x dx = e^x + C\)
\(\int a^x dx = \frac{a^x}{\log a} + C\) (\(a > 0, a \neq 1\))
【ポイント】公式の符号に要注意!
【ポイント】
微分の公式と符号が逆になるものに気をつけましょう。
・\(\sin x\) を微分すると \(\cos x\) ですが、\(\sin x\) を積分すると \(-\cos x\) になります。
・\(\cos x\) を微分すると \(-\sin x\) ですが、\(\cos x\) を積分すると \(\sin x\) になります。
迷ったときは「右辺を微分して被積分関数に戻るか?」を必ず検算する習慣をつけましょう。
【よくある間違い】絶対値記号の忘れ
【よくある間違い】
\(\int \frac{1}{x} dx = \log x + C\) と書いてしまうミスが非常に多いです。
\(x\) が負の値をとる場合も考慮するため、必ず真数に絶対値をつけて \(\log |x| + C\) と書きましょう。
2. 置換積分法(ちかんせきぶんほう)
置換積分法は、合成関数の微分法の逆を利用した積分手法です。式の一部を別の文字(たとえば \(t\))でおき換えることで、複雑な式をシンプルな基本公式の形に変形します。
(1)一次式の置換:\(ax + b = t\) の形
指導要領で特に重視される最も基本的な置換です。
\(ax + b = t\) とおくと、両辺を \(x\) で微分して \(a = \frac{dt}{dx}\) より、\(dx = \frac{1}{a} dt\) と置き換えることができます。
公式:
\(\int f(ax + b) dx = \frac{1}{a} F(ax + b) + C\) (ただし \(F'(x) = f(x), a \neq 0\))
例題: \(\int (3x - 2)^4 dx\)
\(3x - 2 = t\) とおくと、\(3 dx = dt\) すなわち \(dx = \frac{1}{3} dt\) となります。
\(\int t^4 \cdot \frac{1}{3} dt = \frac{1}{3} \cdot \frac{1}{5} t^5 + C = \frac{1}{15} (3x - 2)^5 + C\)
(2)\(\int \frac{g'(x)}{g(x)} dx = \log |g(x)| + C\) の形
分数の形をしていて、「分母を微分したものが分子にある」ときは、即座に対数の形へ積分できます。
例: \(\int \frac{2x}{x^2 + 1} dx\)
分母 \(g(x) = x^2 + 1\) を微分すると分子の \(2x\) になるため、結果は \(\log (x^2 + 1) + C\) と瞬時に求まります(\(x^2 + 1 > 0\) のため絶対値は外せます)。
(3)定積分の置換積分法と三角関数による置換:\(x = a \sin \theta\)
定積分で置換を行う場合は、「積分の区間(下端・上端)の変換」を絶対に行ってください。
定積分の置換積分公式:
\(\int_a^b f(g(x)) g'(x) dx = \int_{g(a)}^{g(b)} f(t) dt\)
特に、\(\sqrt{a^2 - x^2}\) を含む定積分では、\(x = a \sin \theta\) と置換するのが定石です。
\(\left(-\frac{\pi}{2} \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{2}\right)\) とおくことで、\(\sqrt{a^2 - x^2} = \sqrt{a^2(1 - \sin^2 \theta)} = \sqrt{a^2 \cos^2 \theta} = a \cos \theta\) となり、根号をきれいに外すことができます。
例題: \(\int_0^a \sqrt{a^2 - x^2} dx\) (\(a > 0\))
\(x = a \sin \theta\) とおくと、\(dx = a \cos \theta d\theta\)
\(x\) が \(0 \to a\) のとき、\(\theta\) は \(0 \to \frac{\pi}{2}\) に変化します。
\(\int_0^{\frac{\pi}{2}} (a \cos \theta) \cdot (a \cos \theta) d\theta = a^2 \int_0^{\frac{\pi}{2}} \cos^2 \theta d\theta\)
半角の公式 \(\cos^2 \theta = \frac{1 + \cos 2\theta}{2}\) を用いると、
\(= a^2 \int_0^{\frac{\pi}{2}} \frac{1 + \cos 2\theta}{2} d\theta = a^2 \left[ \frac{\theta}{2} + \frac{\sin 2\theta}{4} \right]_0^{\frac{\pi}{2}} = \frac{\pi}{4} a^2\)
【豆知識】定積分と円の面積
【豆知識】
上の例題の \(\int_0^a \sqrt{a^2 - x^2} dx\) は、曲線 \(y = \sqrt{a^2 - x^2}\)(半径 \(a\) の円の上半分)と \(x\) 軸、\(y\) 軸、直線 \(x = a\) で囲まれた図形の面積を表しています。これは半径 \(a\) の円の \(\frac{1}{4}\) の扇形ですから、計算しなくても面積が \(\frac{1}{4} \pi a^2\) になることが図形的に納得できますね!
3. 部分積分法(ぶぶんせきぶんほう)
部分積分法は、積の微分法 \(\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x) + f(x)g'(x)\) の両辺を積分して変形した手法です。「積の形をした関数」を積分するときに威力を発揮します。
部分積分法の公式
不定積分:
\(\int f(x) g'(x) dx = f(x) g(x) - \int f'(x) g(x) dx\)
定積分:
\(\int_a^b f(x) g'(x) dx = \left[ f(x) g(x) \right]_a^b - \int_a^b f'(x) g(x) dx\)
【ポイント】どちらを \(f(x)\)(微分する側)、どちらを \(g'(x)\)(積分する側)にするか?
【ポイント】
高校数学Ⅲの学習指導要領では、「1回の適用で結果が得られる簡単な関数」が中心とされています。
部分積分のコツは、「微分すると簡単になる関数」を \(f(x)\) に、「積分しやすい関数」を \(g'(x)\) に選ぶことです。
・多項式 \(\times\) 指数関数:\((x) \cdot (e^x) \implies x\) を微分側、\(e^x\) を積分側にする。
・多項式 \(\times\) 三角関数:\((x) \cdot (\cos x) \implies x\) を微分側、\(\cos x\) を積分側にする。
・対数関数を含む場合:\(\log x\) は微分すると \(\frac{1}{x}\) と簡単になるため、必ず微分側にします。
代表例1: \(\int x e^x dx\)
\(f(x) = x, g'(x) = e^x\) と置くと、\(f'(x) = 1, g(x) = e^x\)
\(\int x e^x dx = x e^x - \int 1 \cdot e^x dx = x e^x - e^x + C = (x - 1)e^x + C\)
代表例2: \(\int \log x dx\)
被積分関数に積が見当たりませんが、\(1 \cdot \log x\) とみなすのが超有名テクニックです!
\(f(x) = \log x, g'(x) = 1\) と置くと、\(f'(x) = \frac{1}{x}, g(x) = x\)
\(\int \log x dx = (\log x) \cdot x - \int \frac{1}{x} \cdot x dx = x \log x - \int 1 dx = x \log x - x + C\)
4. 定積分の応用(面積・体積・曲線の長さ)
定積分を応用することで、平面図形の面積だけでなく、立体の体積や曲線の長さまで求めることができます。
(1)曲線で囲まれた部分の面積
区間 \(a \leqq x \leqq b\) において、常に \(f(x) \geqq g(x)\) であるとき、\(2\) 曲線 \(y = f(x), y = g(x)\) および \(2\) 直線 \(x = a, x = b\) で囲まれた部分の面積 \(S\) は次式で表されます。
\(S = \int_a^b \{ f(x) - g(x) \} dx\)
・上下関係が途中で入れ替わる場合は、交点を境に区間を分割し、常に「(上の曲線)\(-\)(下の曲線)」を計算します。
・曲線が \(x = g(y)\) のように表され、\(y\) 軸方向に積分した方が簡単な場合は、\(S = \int_c^d g(y) dy\) として計算します。
(2)立体の体積
立体をある直線(通常は \(x\) 軸)に垂直な平面で切断したとき、座標 \(x\) における断面積を \(S(x)\) とすると、\(x = a\) から \(x = b\) までの立体の体積 \(V\) は、断面積の連続的な積み重ねとして求められます。
断面積から求める体積:
\(V = \int_a^b S(x) dx\)
回転体の体積(\(x\) 軸のまわりの回転):
曲線 \(y = f(x)\) と \(x\) 軸、および \(2\) 直線 \(x = a, x = b\) で囲まれた図形を、\(x\) 軸のまわりに \(1\) 回転してできる回転体の体積 \(V\) は、切り口が「半径 \(|y|\) の円」になるため、断面積は \(S(x) = \pi y^2 = \pi \{f(x)\}^2\) となります。
したがって、体積の公式は次の通りです。
\(V = \pi \int_a^b y^2 dx = \pi \int_a^b \{f(x)\}^2 dx\)
(3)曲線の長さ
微小な区間における曲線の長さは、直角三角形の斜辺 \(\sqrt{(\Delta x)^2 + (\Delta y)^2}\) とみなすことができます。三平方の定理の考え方を極限まで細かくして積分したものが、曲線の長さの公式です。
・媒介変数表示された曲線の長さ
曲線が \(x = f(t), y = g(t)\) (\(\alpha \leqq t \leqq \beta\))と表されているとき、その長さ \(L\) は:
\(L = \int_\alpha^\beta \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2} dt\)
・\(y = f(x)\) の形で表された曲線の長さ
曲線 \(y = f(x)\) (\(a \leqq x \leqq b\))の長さ \(L\) は、上の媒介変数の式で \(t = x\) と置いたものに相当します(\(\frac{dx}{dx} = 1\)):
\(L = \int_a^b \sqrt{1 + \left(\frac{dy}{dx}\right)^2} dx = \int_a^b \sqrt{1 + \{f'(x)\}^2} dx\)
【よくある間違い】根号の外し方に注意!
【よくある間違い】
曲線の長さを計算するとき、根号の中身が完全平方式になり \(\sqrt{(A)^2}\) の形が出現することがよくあります。
このとき、無条件に \(\sqrt{A^2} = A\) と外してはいけません。必ず \(\sqrt{A^2} = |A|\) と絶対値を考え、積分区間内で中身が正か負かを確認してから符号を正しく処理しましょう。
まとめ・学習の総仕上げ
数学Ⅲの積分法における重要項目を振り返りましょう。
・基本関数の積分:三角関数・指数関数・対数関数・分数関数の公式を正確に暗記し、微分の逆演算であることを常に意識する。
・置換積分法:\(ax + b = t\) の基本置換、分子が分母の微分になっている形、定積分における \(x = a \sin \theta\) 置換をマスターする。定積分のときは積分区間の変更を忘れない!
・部分積分法:微分する側と積分する側を的確に選び、公式「そのまま \(\times\) 積分 \(-\) \(\int\)(微分 \(\times\) 積分)」をスムーズに実行する。
・面積・体積・長さ:面積は「上 \(-\) 下」、体積は「断面積 \(S(x)\) の集積」、曲線の長さは「三平方の定理のミクロな足し合わせ」という幾何的イメージをしっかり持っておく。
積分の計算力は、練習した問題の数に確実に比例します。最初は公式を見ながらでも構いません。教科書や問題集の基本問題を繰り返し解いて、計算の手順を体に染み込ませていきましょう!