バリューチェーン、VBM、ABM、およびビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)

APMセクションB:パフォーマンスの最適化(Performance Optimisation)の中でも、特に実務的で得点源にしやすい重要チャプターへようこそ!ビジネスにおいて成功を収めるためには、期末に業績結果をただ測定するだけでは不十分です。日々のオペレーションを最適化し、業務プロセスを効率化し、すべての活動を「真の価値創出」へと集中させることが不可欠となります。

本チャプターでは、業務パフォーマンスを分析・変革するための強力な4つの戦略的管理会計フレームワークを学びます:

• ポーターのバリューチェーン(Porter's Value Chain):組織を個別の活動に分解し、どこで価値が生み出され、あるいは損なわれているかを特定します。
• 活動基準管理(ABM:Activity-Based Management):活動レベルの原価データ(ABC)を活用してムダを排除し、顧客が真に重視するものへとリソースを集中させます。
• 価値基準経営(VBM:Value-Based Management):企業戦略、オペレーショナル・ドライバー、および業績評価指標を、株主価値の創造へと直接連動させます。
• ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR:Business Process Re-engineering):非効率な従来の業務手法を根本から打破し、劇的なパフォーマンスの飛躍的向上を達成します。

最初はコンサルティングのバズワードのように聞こえるかもしれませんが、心配はいりません!それぞれをシンプルなステップ、身近なビジネスの例え、そしてAPM試験の実戦的な出題パターンに落とし込んで解説していきますので、自信を持って評価できるようになりますよ。

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1. ポーターのバリューチェーン

バリューチェーン(価値連鎖)とは?

マイケル・ポーターによって提唱されたバリューチェーンは、組織を一連の独立した「価値創出活動の連鎖」として捉えるモデルです。ここでいう「価値(Value)」とは、組織が提供するものに対して買い手が支払ってもよいと考える対価(支払意欲額)と定義されます。連鎖内のすべての活動を行うためにかかった総コストを、生み出された総価値が上回っていれば、組織は利益を上げることができます。この差額をマージン(Margin:利幅)と呼びます。

ポーターはこれらの活動を、製品やサービスの生産・提供に直接関わる主活動(Primary Activities)と、それを支えて円滑にする支援活動(Support Activities)の2つに大別しました。

バリューチェーンの構造

主活動(Primary Activities):

• 購買物流(Inbound Logistics):インプット(投入資材)の受入、保管、荷役、および配分(例:原材料の倉庫管理、在庫管理、サプライヤーの納入計画策定)。
• 製造・オペレーション(Operations):インプットを最終製品やサービスへと変換する作業(例:機械加工、組み立て、梱包、検査、設備メンテナンス)。
• 出荷物流(Outbound Logistics):完成品を回収、保管し、買い手へ物理的に配送する活動(例:受注処理、完成品倉庫管理、配送フリートの運行)。
• マーケティングと販売(Marketing and Sales):顧客に製品の購入を促す活動(例:広告宣伝、価格設定、営業部隊の管理、プロモーション、流通チャネルの選定)。
• サービス(Service):販売後に製品の価値を維持・向上させる活動(例:設置導入、トレーニング、修理サービス、部品供給、顧客からのクレーム対応)。

支援活動(Support Activities):

• 調達活動(Procurement):バリューチェーン全体で使用されるインプットを購入する機能(例:仕入先との契約交渉、原材料・機械設備・事務用品の購入)。
• 技術開発(Technology Development):すべての活動におけるプロセスや設備に組み込まれたノウハウ、手順、技術(例:製品の研究開発、プロセスの自動化、社内ITソフトウェア開発)。
• 人的資源管理(Human Resource Management):主活動および支援活動のすべてにわたる人員の採用、雇用、育成、能力開発、および報酬管理。
• 全般管理・インフラストラクチャー(Firm Infrastructure):組織全体を支える全般統括、戦略的計画、法務、会計、財務、および品質マネジメントシステム。

主活動の覚え方のコツ:物理的な製品がたどる自然な流れをイメージしましょう:資材が入ってきて(購買物流/Inbound) \(\implies\) 作って(製造/Operations) \(\implies\) 出荷して(出荷物流/Outbound) \(\implies\) 売って(マーケティング&販売/Marketing) \(\implies\) 支える(サービス/Service)。 頭文字をとって「資・作・出・売・支(I-O-O-M-S)」と覚えましょう!

リンケージ(連携):真の差別化が生まれる場所

APM試験において、単に9つの活動をリストアップするだけではほとんど得点できません。高得点を獲得する鍵は、活動同士の相互関係や調整メカニズムである「リンケージ(Linkages:連携・結びつき)」を適切に評価できるかどうかにあります。

• 内部リンケージ(Internal Linkages):ある活動のやり方が、別の活動のコストやパフォーマンスにどう影響するかを指します。例えば、「製造・オペレーション」で高精度な部品検査にコストをかければ、「サービス」における販売後の保証修理費用を劇的に削減できるかもしれません。逆に、「購買物流」と「製造」の連携が不十分だと、部品待ちによる工場の稼働停止を引き起こします。
• 外部リンケージ(External Linkages / バリューシステム):組織は単独で孤立して活動しているわけではありません。企業のバリューチェーンは、川上のサプライヤーや川下の流通業者・顧客のバリューチェーンと密接につながっています。例えば、自社の電子データ交換(EDI)システムを主要サプライヤーと直接接続すれば、ジャストインタイム(JIT)での納品が可能になり、双方の保管コストを大幅に削減できます。

身近な例え:手作りの高級ケーキを製造・配送するビジネスを考えてみてください。もし「調達」で安物の質の悪い小麦粉を買ってしまうと、「製造」での焼き時間や廃棄ロスが増加し、「出荷物流&サービス」では『パサパサしておいしくない』というクレーム対応に追われ、リピートしてもらうために「マーケティング」費用を倍増させなければならなくなります。バリューチェーンを最適化するとは、孤立した一部門だけでコストを切り詰めることではなく、システム全体を調和させて連携させることなのです。

パフォーマンス最適化におけるバリューチェーン分析

APMのシナリオ問題でバリューチェーン全体のパフォーマンス分析を求められたら、以下の観点から評価を行いましょう:

1. コストリーダーシップ(コスト優位性):どの活動で最もコストが発生しているか?顧客が認識する価値を損なうことなくコストを削減できるか?(例:倉庫レイアウトの見直しや、注文処理の自動化など)
2. 差別化:プレミアム価格の設定を可能にしている「優れた機能」「ブランドのプレステージ性」「迅速なサービス」などを直接生み出しているのは、どの活動か?
3. 非付加価値ステップの排除:途中の過剰な保管、二重検査、煩雑な書類の引き継ぎなど、価値を生まない作業を排除できないか?

最重要ポイント:バリューチェーンは、組織を「相互に依存し合う活動のシステム」として捉える視点を与えてくれます。最適化を果たすには、機能ごとの縦割り(サイロ)で業績を判断するのではなく、部門横断的なトレードオフとリンケージをマネジメントすることが不可欠です。

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2. 活動基準管理(ABM)

ABC(活動基準原価計算)から ABM(活動基準管理)へ

これまでの管理会計の学習で活動基準原価計算(ABC:Activity-Based Costing)を学んだのを覚えているでしょうか。ABCは分析的な原価計算ツールです。資源コストドライバーを用いて間接費を各「活動」に割り振り、その後、活動コストドライバーを用いてそれらの活動コストを原価計算対象(製品、サービス、顧客など)に配賦します。

これに対して活動基準管理(ABM)とは、そのコスト情報を経営管理に能動的に活用することを指します。ABMは、ABCによって得られた精緻な可視性を駆使して、業務プロセスを再設計し、ムダを排除し、製品設計を改善し、戦略的な価格決定を下すために用いられます。

一言で言えば:「ABCがデータを提供し、ABMが行動を起こす」ということです。

業務的ABM(Operational ABM)と戦略的ABM(Strategic ABM)

ABMは大きく2つのレベルで機能します:

1. 業務的ABM(「物事を正しく行う(Doing things right)」):
業務効率の向上、ビジネスプロセスの改善、および資産の有効活用に焦点を当てます。アウトプットの品質を維持または向上させながらコストを下げるために、活動そのものを詳細に分析します。
• 付加価値活動(Value-adding activities):顧客の視点から製品やサービスの価値を高め、顧客が進んで対価を支払う活動(例:精密な機械加工、組み立て作業、迅速な配送など)。
• 非付加価値活動(Non-value-adding activities):資源や時間を消費するものの、顧客にとっては何の価値も生み出さない活動(例:一時保管場所への原材料の往復移動、段取り指示の待ち時間、組み立てミスの手直し、作業の再検査など)。業務的ABMの目的は、これら非付加価値活動を排除(eliminate)、削減(reduce)、または自動化(automate)することです。

2. 戦略的ABM(「正しい物事を行う(Doing the right things)」):
戦略、製品ミックス、顧客収益性、および市場でのポジショニングに焦点を当てます。
• 顧客収益性分析(CPA:Customer Profitability Analysis):ABCを導入すると、上位20%の顧客が利益の80%を生み出している一方で、売上高は大きいものの非標準的な過剰サポート、急な特急配送、頻繁な発注変更などを要求し、結果として実質赤字をもたらしている顧客の存在が浮き彫りになることがよくあります。戦略的ABMを活用することで、経営陣は契約価格の改定、最低発注数量の設定、サービス条件の見直しなどの手を打つことができます。
• 製品ポートフォリオの意思決定:生産量が少ない割に複雑で、段取り替えや品質検査の間接費を不釣り合いに消費している製品を特定し、設計変更、値上げ、あるいは生産中止(ディスコン)の判断を下す指針となります。

ABMに関するAPM試験の落とし穴

試験対策のアドバイス:試験問題で明確にABCレートの計算を求められない限り、APM試験の貴重な時間を単調な間接費配賦計算に費やしてはいけません!APMで問われるのは「評価(Evaluation)」と「プロフェッショナルとしての懐疑心(Scepticism)」です。受験者には、ABMデータ自体の信頼性、活動ドライバーのデータを集める高額なコストが商業的に正当化されるかどうか、そして自分の担当活動が細かく監視されることに対して管理職がどのように行動するか(行動への影響)を批判的に評価する力が求められます。

最重要ポイント:ABMは、経営陣の関心を「その部門はいくら使ったのか?」という問いから、「その部門は何の活動を行い、なぜそれを行い、その活動は顧客にとって価値を付加したのか?」という本質的な問いへとシフトさせます。

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3. 価値基準経営(VBM)

VBMの根本思想

価値基準経営(VBM)とは、企業の全体戦略、分析手法、業績測定システム、そして組織文化を、ひとつの至上目的に向けて統合する包括的な経営アプローチです。その目的とは「株主価値の最大化」です。

売上総利益、営業利益、あるいは一株当たり利益(EPS)といった従来の会計指標は、時にミスリーディングになり得ます。企業は、自社の資本コストを下回るリターンしか生まないプロジェクトに巨額の資本を投じることでも、会計上の利益を増やすことができてしまうためです——しかしそれは実際には、株主の富を破壊していることに他なりません。VBMは、あらゆる戦略的・業務的意思決定を「そこに縛り付けられている資本のコスト」と照らし合わせて評価させることで、こうした富の破壊を防ぎます。

VBMの4つの主要な柱

VBMは、以下の4つのステップからなる循環プロセスとして実践されます:

1. 戦略の策定(Strategy Formulation):どの市場、製品、投資が、加重平均資本コスト(\(\text{WACC}\))を上回る長期的な経済的価値を生み出すかを明確に定義します。
2. バリュードライバーの特定(Identifying Value Drivers):事業部や製造現場などの実務レベルにおいて、価値創造に最も大きな影響を与える現場のオペレーショナル・レバー(操作変数)を特定します。
3. 目標設定と業績評価(Target Setting and Performance Measurement):歪みの生じやすい従来の会計指標ではなく、経済的利益に基づく指標——代表的には経済的付加価値(\(\text{EVA}\))——を用いて目標を設定します。
4. 評価と報酬(Remuneration and Reward):管理職のボーナスや従業員のインセンティブを価値創造指標に直接連動させ、管理職の行動を株主の利益と合致させます。

バリュードライバー(価値要因)の理解

工場の現場作業員や最前線のカスタマーサポート担当者が、全社レベルの \(\text{EVA}\) や \(\text{WACC}\) を直接コントロールすることはできません。そのためVBMでは、上位の抽象的な価値創造指標を、現場でコントロール可能な具体的な「オペレーショナル・バリュードライバー」へとブレイクダウン(カスケードダウン)することが求められます。

計算の基本式を思い出してみましょう:\(\text{EVA} = \text{NOPAT} - (\text{Capital Employed} \times \text{WACC})\)

\(\text{EVA}\) を向上させるために、企業ができるアプローチは以下の通りです:

• 営業利益(\(\text{NOPAT}\))の拡大:販売数量の増加、価格設定の最適化、営業費用の削減、非付加価値活動のコスト排除。
• 使用資本(Capital Employed)の圧縮:運転資本の最小化(例:売掛金回収の迅速化、在庫保有日数の短縮)、非効率な固定資産の売却・処分。
• 調達資本コスト(\(\text{WACC}\))の最適化:適切な財務リスクの範囲内で、最適な資本構成(キャピタルストラクチャー)を構築する。

具体例:倉庫管理マネージャーは \(\text{WACC}\) を操作することはできません。しかし、在庫回転日数を45日から25日へと短縮すれば、滞留していたキャッシュを解放して使用資本を削減し、倉庫の保管賃料という間接費を削減できるため、結果として全社の \(\text{EVA}\) 向上に直接貢献します。VBMにおいて、この「在庫回転日数」こそが、そのマネージャーにとってのオペレーショナル・バリュードライバーとなるのです。

VBMのメリットと実務上の課題

メリット:
• 企業全体に、首尾一貫した単一の目標を浸透させることができる。
• 見かけの会計上は黒字に見えても、資本コストを稼げていないような自己満足的な拡大プロジェクト(帝国建設)への過剰投資を防止できる。
• 長期的な視点で資本規律を重んじる企業風土を醸成できる。

実務上の課題&APMで求められる批判的視点:
• 短期志向(Short-termism):目先の当期の \(\text{NOPAT}\) や \(\text{EVA}\) を人為的につり上げるために、不可欠な研究開発費、従業員研修、予防保全などを削減してしまうリスクがある。
• 複雑性:\(\text{EVA}\) を算出するための会計上の修正(例:研究開発費の資産計上、オペレーティングリースの調整など)が複雑になりすぎて、財務畑以外の現場マネージャーが理解・納得しにくくなる。
• 他のステークホルダーの軽視:株主リターンばかりに過度に目を奪われると、従業員、サプライヤー、顧客、地域社会をないがしろにし、かえって長期的な持続可能性を損なう恐れがある。

最重要ポイント:VBMの本質は、資本を「コストのかかる貴重な資源」として扱う点にあります。現場への落とし込みが成功するかどうかは、企業全体の財務的価値を、日々の業務で管理できるオペレーショナル・ドライバーへといかに変換できるかにかかっています。

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4. ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)

BPRとは?

マイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピーによって提唱されたビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)は、次のように定義されています:

「コスト、品質、サービス、スピードといった、現代の重要かつ決定的なパフォーマンス指標において劇的な改善を達成するために、ビジネスプロセスを根本的に見直し、抜本的に再設計すること。」

この定義に含まれる4つのキーワードに注目してください:

• 根本的(Fundamental):「なぜ今この業務を行っているのか?」「なぜこのやり方でやっているのか?」という根源的な問いを投げかけ、長年信じ込まれてきた前提条件をすべて疑います。
• 抜本的(Radical):物事の根っこから変えることを意味します。枝葉の微調整や表面的な手直しではなく、仕事の進め方を完全に刷新します。
• 劇的(Dramatic):年率2%といった小幅な漸進的改善ではなく、リードタイムの80%短縮やコストの半減など、桁違いの飛躍的向上(クアンタムリープ)を目指します。
• プロセス(Processes):部門ごとの縦割りの壁を越え、顧客に価値を届けるための一連のエンド・ツー・エンドの活動の束(例:受注処理から納品まで、保険金請求処理、新製品開発など)に焦点を当てます。

BPRと漸進的改善手法(カイゼンなど)の違い

APM試験において、受験生はBPRを「カイゼン(Kaizen)」や「TQM(総合的品質管理)」などの継続的改善手法と混同しがちです。以下の違いを明確にしておきましょう:

• 漸進的改善(カイゼン/TQM):既存のプロセスを出発点とし、現場主導の小さなステップを積み重ねて継続的に改善していく。リスクが低く、ボトムアップで進められ、組織文化への摩擦が少ない。
• BPR:白紙の状態(ゼロベース思考)からスタートし、「もし今日ゼロから作り直すとしたら、どうあるべきか?」を問う。リスクが高く、トップダウン主導で推進され、破壊的かつ革命的である。

BPRの主要原則

1. タスク(個別作業)ではなく、成果(アウトカム)を中心に組織化する:書類を6つの別々の部門に次々と回送させるのではなく、1人の担当者や多能工化された専任チームが最初から最後まで全プロセスを担当するようにする。
2. プロセスの成果物を利用する人に、そのプロセス自体を実行させる:例えば、消耗品の発注を中央の購買部門に申請書で依頼するのではなく、事前に承認された電子カタログを通じて各現場部門が直接注文できるようにする。
3. 情報処理作業を、その情報を生み出す本来の作業の中に組み込む:納入ドックに荷物が届いた時点で、受入担当者がバーコードを基幹システムに直接スキャンする。これにより、発注書との照合や支払承認が自動的に完了し、請求書照合のためだけの事務員を不要にする。
4. 地理的に分散している資源を、あたかも中央に集約されているかのように扱う:統一された企業データベースやネットワークを活用し、離れた地域のチーム間でもシームレスにリソースを共有する。
5. 情報は、発生源で一度だけ入力・取得する(ワンソース・マルチユース):紙の帳票に手書きで記入し、それを後から別の人がパソコンに再入力するようなムダな二重入力を全廃する。

BPR、システム開発、および組織パフォーマンス

多くの場合、最新のIT(情報技術)がBPRを実現する最大のイネーブラー(推進力)となります。ただし、欠陥のある既存のプロセスを単にITで自動化することはBPRとは呼びません。それは単に「曲がりくねった牛の歩道を用水路で舗装しただけ(効率の悪いやり方を固定化しただけ)」にすぎないからです。BPRとは、テクノロジーを活用して「まったく新しい仕事のやり方」を可能にすることを意味します。

実例:従来の個人向け融資の申し込みでは、顧客が紙の申込書を記入し、それが支店に郵送され、事務員が審査し、リスク担当部署へ送られて与信判断が行われ、法務部で書類確認が行われ、最後に管理部に戻って資金が実行されるまでに14日かかっていました。再設計(リエンジニアリング)されたプロセスでは、オンラインポータル、自動与信スコアリングアルゴリズム、および即時口座確認を活用し、わずか14秒で資金が口座に振り込まれます。部門間の縦割り業務が、一気通貫のデジタルワークフローへと完全に置き換わったのです。

BPRのリスクと業績管理上の課題

BPRがもたらす果実は計り知れませんが、歴史的にその失敗率は非常に高いことで知られています:

• 深刻な企業文化の混乱と激しい抵抗:劇的な変化は従業員に恐怖感や雇用の不安をもたらし、自らの部署の縄張りを奪われる中間管理職からの強い反発を招きます。
• オペレーションの一時的麻痺:新しいプロセスが安定する前に実績あるレガシーシステムを性急に破棄してしまうと、移行期間中に顧客サービスが壊滅的な打撃を受けるリスクがあります。
• 専門性の喪失と内部統制の緩み:部門横断的なジェネラリストに頼りすぎると、かつて専門部署が持っていた高度で専門的な技術知識が失われる可能性があります。
• パフォーマンスの初期落ち込み(失望の谷):プロセスを根本から変えると、成果が出る前に一時的にパフォーマンスが大幅に悪化する局面(いわゆる「Valley of Despair」)が必ず訪れます。これを乗り越えるには、経営陣の揺るぎない覚悟と忍耐強いリーダーシップが必要です。

最重要ポイント:BPRは、部門横断的なプロセスを白紙から再構築する「オール・オア・ナッシング」の取り組みです。最新ITと結びつくことで圧倒的なパフォーマンス向上をもたらす反面、極めて高い業務リスクと人的リスクを伴います。

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5. 4つの手法の比較まとめ

APM試験のシナリオに応じて最適な手法を選択・評価できるよう、4つの手法の違いを整理しておきましょう:

• ポーターのバリューチェーン:
主眼:戦略的な活動のマッピングと、活動間のリンケージ(連携)分析。
核心となる問い:主活動と支援活動のどこで競争優位が生み出され、あるいは余計なコストが発生しているか?
最適な活用場面:戦略的ポジショニング(コストリーダーシップか差別化か)の分析や、複数部門にまたがるボトルネックの診断。

• 活動基準管理(ABM):
主眼:業務レベルおよび戦略レベルでのコストドライバー管理。
核心となる問い:どの活動が顧客にとっての付加価値を生んでおり、どの非付加価値活動を排除すべきか?
最適な活用場面:間接費の割合が高く、製品や顧客の複雑さによる内部相互補助が発生しており、ターゲットを絞ったムダの削減が必要な場合。

• 価値基準経営(VBM):
主眼:株主の富の最大化と資本効率の追求。
核心となる問い:自社の事業部門や戦略は、調達資本コストを上回るリターン(\(\text{EVA} > 0\))を生み出しているか?
最適な活用場面:事業部ごとのインセンティブ構造の再構築、遊休・固定資本の圧縮、短期的な会計利益ばかりを追う経営姿勢の是正。

• ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR):
主眼:プロセスの白紙からの抜本的再設計。
核心となる問い:最新のITを駆使してこのエンド・ツー・エンドの業務を今日ゼロから構築するとしたら、どのような姿になるか?
最適な活用場面:既存の業務プロセスが完全に破綻しており、顧客満足度が著しく低下し、漸進的な改善ではもはや競争に勝てない場合。

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6. 試験シナリオにおけるプロフェッショナルスキルの発揮法

Strategic ProfessionalレベルのAPMでは、専門知識だけでなく「プロフェッショナルスキル」を示すことが合格への必須条件です。このチャプターの内容について、試験官が求めているスキルの発揮ポイントは以下の通りです:

• 分析と評価(Analysis and Evaluation):納期遅延、不良品率、クレーム件数、間接費プールなどの業務データが提示された際、単に数値をなぞるだけでは不十分です。差異を分析し、根本原因(例:購買時のサプライヤーチェックがずさんなため、製造現場でスクラップが多発している等)を突き止め、どの手法(ABMか、BPRか、それともバリューチェーンのリンケージ調整か)が最適な解決策になるかを評価してください。
• 懐疑心(Scepticism):経営陣の前提や思い込みに疑問を投げかけましょう。例えばCEOがわずか3%のコスト差異を解消するためにBPRを提案している場合、「BPRに伴う莫大なコスト、現場の混乱、失敗リスクを冒す価値があるのか?カイゼンのような漸進的アプローチの方が適切ではないか?」と疑問を呈します。同様に、短期の \(\text{EVA}\) を良く見せるために必要な長期資産への投資を手控えるマネジメントの動きにも鋭く懐疑の目を向けましょう。
• 商業的洞察力(Commercial Acumen):現実のビジネス環境における実務的な制約を考慮に入れます。「ABMの導入には精緻なITデータ収集基盤が必要であり、その構築費用が削減できる間接費を上回ってしまう恐れがある」といった現実的な指摘ができるかどうかがポイントです。また、プロセス再設計時の従業員の士気低下、労働組合の反発、サプライヤー側の抵抗といったリスクにも言及しましょう。
• コミュニケーション(Communication):取締役会向けの公式レポートなどの形式で提言を行う際は、客観的でプロフェッショナルなトーンを崩さず、明確な見出しを用い、経営陣が意思決定しやすいように簡潔かつ論理的に提言をまとめましょう。

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チャプター要点チェック

• ポーターのバリューチェーンは、企業の活動を5つの主活動(購買物流、製造、出荷物流、マーケティング・販売、サービス)と4つの支援活動(調達、技術開発、人事、全般管理)に分類します。活動間のリンケージ(連携)を適切に管理することが、持続可能な競争優位につながります。
• ABMは、ABCのコストドライバーデータを経営改善に活用する手法です。業務的ABMは非付加価値活動を排除し、戦略的ABMは製品ミックスや顧客収益性を最適化します。
• VBMは、資本コストに対する経済的リターン(\(\text{EVA}\))を測定し、全社的な財務目標を現場のオペレーショナル・バリュードライバーへと落とし込むことで、現場の活動と戦略を株主価値の創造へと直結させます。
• BPRは、業績の劇的な向上を狙い、部門横断的なプロセスを根本から見直して抜本的に再設計する手法です。白紙アプローチとITの活用が前提となりますが、極めて高いリスクと業務上の混乱を伴います。