ボラティリティへようこそ:リスクの鼓動

ようこそ!株価がなぜある日は「ジェットコースター」のように乱高下し、またある日は穏やかなのか不思議に思ったことはありませんか?それがまさにボラティリティです。この章では、その「荒々しさ」をどのように測定するかを学びます。これはバリュエーションとリスクモデルのセクションにおいて非常に重要です。なぜなら、価格がどれくらい変動しそうかを把握できなければ、VaR(バリュー・アット・リスク)を計算したり、オプション価格を正確に算出したりすることができないからです。

最初は数式が難しく見えるかもしれませんが、心配しないでください。日常的な例えを使いながら、ステップごとに噛み砕いて解説していくので、概念がしっかりと定着しますよ!


1. 日次リターンとボラティリティの理解

ボラティリティを測定する前に、何を測定しているのかを理解しましょう。通常、私たちは日次リターンに注目します。FRMの世界では、数学的に扱いやすいため、連続複利リターン(対数リターン)を用いることが一般的です。

日 \(n\) のリターン \(u_n\) は、通常次のように計算されます。
\(u_n = \ln(S_n / S_{n-1})\)

クイック復習: ボラティリティ(\(\sigma\))は、本質的にこれらリターンの標準偏差です。これは、価格がどの範囲内で動くと予想されるかを示します。分散(\(\sigma^2\))は、単にボラティリティを2乗したものです。

よくある間違い: 学習者は分散とボラティリティの区別を忘れがちです。これだけ覚えておきましょう:分散は「2乗した」値、ボラティリティは「元の単位」の値です。問題でボラティリティを求められているのに分散が与えられたら、平方根をとるのを忘れないでくださいね!


2. 単純移動平均(「昔ながら」の方法)

分散を推定する最もシンプルな方法は、過去 \(m\) 日間の2乗リターンの平均をとることです。
\(\sigma_n^2 = \frac{1}{m} \sum_{i=1}^{m} u_{n-i}^2\)

問題点: この方法では、昨日起きた市場の暴落も、30日前のわずかな価格変動も同じ重みで扱ってしまいます。しかし実際には、昨日起きたことの方が明日起きることに対して圧倒的に大きな影響を与えますよね。

まとめ: 単純移動平均は簡単ですが、期間内のすべてのデータポイントを等しく扱うため、変化に対する反応が「遅い」という欠点があります。


3. EWMA:「薄れゆく記憶」モデル

指数加重移動平均(EWMA)は、等重み付けの問題を解決します。直近のデータには大きな重みを置き、古いデータには小さな重みを置く手法です。

新しい分散(\(\sigma_n^2\))を求める式は次の通りです。
\(\sigma_n^2 = \lambda \sigma_{n-1}^2 + (1 - \lambda) u_{n-1}^2\)

構成要素:
1. \(\lambda\)(ラムダ): これは減衰因子(decay factor)です。通常0.90から0.99の間で設定されます(RiskMetricsでは0.94が使われます)。
2. \(\sigma_{n-1}^2\): 前日の分散推定値。
3. \(u_{n-1}^2\): 前日の実際の2乗リターン。

例え: EWMAをレストランの評価の記憶だと思ってください。昨日の食事の味(\(u_{n-1}^2\))はあなたの意見に大きな影響を与えますが、長期的な全体評価(\(\sigma_{n-1}^2\))も重要です。日が経つにつれて、あの一回の悪い食事の記憶は「薄れて」いき、重要度が下がっていきます。

重要ポイント: \(\lambda\) が高いほど、モデルは「記憶力が長い(ゆっくり変化する)」ことを意味し、\(\lambda\) が低いほど、新しい情報に対して非常に敏感に反応することを意味します。


4. GARCH (1,1) モデル:平均回帰の導入

GARCHは「Generalized Autoregressive Conditional Heteroskedasticity(一般化自己回帰条件付き不均一分散)」の略です。(名前で怖がらないでください。単に「ボラティリティは時間とともに変化し、長期平均を意識する」ということを小難しく言っているだけです。)

EWMAはボラティリティがどこまでも彷徨い得ると仮定しますが、GARCH (1,1) はボラティリティがいずれ長期平均に戻ろうとすると仮定します。これが平均回帰(mean reversion)です。

GARCH (1,1) の式は次の通りです。
\(\sigma_n^2 = \omega + \alpha u_{n-1}^2 + \beta \sigma_{n-1}^2\)

3つの要素:
1. \(\omega\)(オメガ): 長期分散(\(\gamma V_L\))の重み付け版。
2. \(\alpha\)(アルファ): 直近のニュース(昨日のリターン)に与えられる重み。
3. \(\beta\)(ベータ): 前日の分散に与えられる重み。

豆知識: もし \(\omega = 0\) かつ \(\alpha + \beta = 1\) に設定すると、GARCHモデルはEWMAモデルに姿を変えます!つまり、EWMAは平均回帰を含まないGARCHの特別なケースというわけです。

長期平均分散(\(V_L\))の計算:

長期分散は以下の式で求められます。
\(V_L = \frac{\omega}{1 - \alpha - \beta}\)

安定条件: モデルが安定して「平均回帰」するためには、\(\alpha + \beta\) の合計が1未満でなければなりません。もし \(\alpha + \beta > 1\) ならば、ボラティリティは「爆発的」になり、平均値には戻らなくなります。

重要ポイント: GARCH (1,1) は一般的に、ボラティリティがいずれ落ち着くという事実を考慮しているため、長期的な予測においてEWMAよりも優れていると考えられています。


5. 最尤法(MLE)

こう思うかもしれません:\(\lambda\)、\(\alpha\)、\(\beta\) の最適な値はどうやって選ぶの?

そこで使われるのが最尤法(Maximum Likelihood Estimation: MLE)という手法です。FRM試験のために複雑な微積分をする必要はありませんが、考え方は理解しておく必要があります。

MLEのステップバイステップの論理:
1. パラメータ(\(\alpha, \beta\))の試行値を決める。
2. そのパラメータが真であると仮定した場合、実際の過去データが発生する確率(尤度)を計算する。
3. コンピュータを使って、その確率が最大化されるまでパラメータを調整し続ける。
4. この「ベストフィット」した値が、あなたのモデルのパラメータになります。


6. 相関と共分散の監視

ボラティリティは一つの資産だけでなく、二つの資産がどう連動するかも重要です。これが共分散です。

幸いなことに、共分散の計算はボラティリティとほぼ同じです!EWMAGARCHを使って共分散を更新できます:
共分散のEWMA: \(cov_n = \lambda cov_{n-1} + (1 - \lambda) x_{n-1} y_{n-1}\)

共分散と個々のボラティリティがわかれば、相関係数(\(\rho\))が求められます:
\(\rho_{xy} = \frac{cov_{xy}}{\sigma_x \sigma_y}\)

相関の覚え方: 「共分散を各標準偏差の積で割る」。相関係数は常に-1から+1の間に収まらなければならないことを忘れないでください。もし計算結果が1.2になったら、立ち止まって計算を確認しましょう!


7. 最後のクイック復習とまとめ

学習セッションの最後に、最も重要なポイントを整理しましょう:

  • 単純移動平均: 等しい重み付け。「ゴースト効果(古いデータが突然抜け落ちる)」がある。
  • EWMA: 指数加重、反応が速い、\(\lambda\) を使用。長期平均の概念がない。
  • GARCH (1,1): 平均回帰を含む。「全体像」を見るのに最適。
  • 持続性(Persistence): GARCHでは \(\alpha + \beta\) で表される。「ボラティリティショック」がどれだけ長く続くかを示す。
  • 重み: どの有効なモデルでも、重みの合計は1にならなければならない。

応援メッセージ: この章は数式が多くて大変ですが、試験ではモデルの挙動について問われることが多いです。\(\lambda\) や \(\alpha\) を変えると、モデルの世界の見方がどう変わるかを理解することに集中してください。あなたなら絶対大丈夫です!