変動金利の世界へようこそ!
これまで、皆さんはキャッシュフローを評価する際に単一の利率(\( i \))を使用してきたことでしょう。計算はシンプルで済みますが、現実世界はもう少し複雑です。アクチュアリー科学や金融の実務において、金利は通常、キャッシュフローが「いつ」発生するかによって決まります。これを金利の期間構造(Term Structure of Interest Rates)と呼びます。
この章では、スポットレート(直物金利)とフォワードレート(先渡金利)を使ってキャッシュフローを評価する方法を学びます。これらの用語が難しそうに聞こえても心配はいりません!本編を終える頃には、これらが結局同じ「お金の価格」を異なる視点で見ているだけだということが分かるはずです。それでは、さっそく見ていきましょう!
1. スポットレート(直物金利)の理解
スポットレートとは、将来の特定の時点で行われる単一の支払いに対して、現時点で適用される年利のことです。通常、\( t \) 年後のスポットレートを \( s_t \) と表記します。
コンセプト:「ゼロクーポン債」(満期まで利払いがない債券)を買う場面を想像してください。1年満期の債券を買う場合の金利は \( s_1 \)、5年満期の債券を買う場合は \( s_5 \) です。通常、これらの金利は一致しません!
イールドカーブ:横軸を「期間」、縦軸を「金利」にしてスポットレートをグラフにプロットした線をイールドカーブ(利回り曲線)と呼びます。
• 順イールド(Normal Yield Curve):期間が長くなるにつれて金利が上昇する(投資家は、お金を長く拘束される分、より高い報酬を求めるため)。
• 逆イールド(Inverted Yield Curve):長期金利が短期金利を下回る状態。
スポットレートを用いた現在価値(PV)の計算
異なるタイミングで複数のキャッシュフローが発生する場合、単一の \( i \) を使うことはできません。代わりに、各キャッシュフローをその時点のスポットレートで割り引く必要があります。
公式:
\( PV = \frac{CF_1}{(1+s_1)^1} + \frac{CF_2}{(1+s_2)^2} + \dots + \frac{CF_n}{(1+s_n)^n} \)
例:1年後に100ドル、2年後に200ドルを受け取る約束があるとします。スポットレートは \( s_1 = 3\% \)、\( s_2 = 4\% \) です。
\( PV = \frac{100}{1.03} + \frac{200}{(1.04)^2} = 97.09 + 184.91 = 282.00 \)
クイック復習:
• スポットレート (\( s_t \)):今日から時点 \( t \) までの「点と点をつなぐ」投資の金利。
• 重要ルール:必ずキャッシュフローが発生するタイミングに対応したスポットレートを使うこと。
2. フォワードレート(先渡金利)の理解
フォワードレートとは、将来開始され、一定期間継続するローンや投資に対して、今日合意される金利のことです。
アナロジー:スポットレートを今日から3年目までの「直行便」だと考えてください。フォワードレートは、乗り継ぎ便の「片方の区間」のようなものです。具体的には、3年目の1年間限定で得られる金利を指します。
表記の注意:表記法は様々ですが、Exam FMでは以下が一般的です:
• \( f_t \):通常、時点 \( t \) から \( t+1 \) までの1年間のフォワードレートを表します。
• \( f[t_1, t_2] \):時点 \( t_1 \) に始まり、\( t_2 \) に終わる期間の年利を表します。
スポットレートとフォワードレートの関係
この2つの間には非常に重要な数学的関係があります。「裁定取引」(タダで儲けること)を防ぐため、2年間のスポットレートで2年間運用した結果と、1年目のスポットレートで1年間運用し、その後もう1年分を1年フォワードレートで運用した結果は一致しなければなりません。
「黄金の式」:
\( (1+s_t)^t = (1+s_{t-1})^{t-1} \times (1 + f_{t-1, t}) \)
シンプルにしましょう!
2年目の1年フォワードレート(\( f_1 \))を求めるには:
\( (1+s_2)^2 = (1+s_1) \times (1+f_1) \)
計算の手順:
1. 長期期間の全体成長率をとる:\( (1+s_2)^2 \)。
2. 第1期間の成長率で割る:\( (1+s_1) \)。
3. 最後に1を引いて金利を出す。
豆知識:スポットレート \( s_2 \) が \( s_1 \) よりも高い場合、平均を押し上げるためには、フォワードレート \( f_1 \) は両方よりも高くなければなりません!
3. フォワードレートを用いたPVの計算
1年ごとのフォワードレートの列が与えられている場合、レートの連鎖を後ろから遡るように1年ずつ割り引くことでPVを求められます。
プロセス:
時点3のキャッシュフローを時点0に割り引く場合:
\( PV = \frac{CF_3}{(1+s_1)(1+f_1)(1+f_2)} \)
例:時点2に500ドルの支払いがあります。\( s_1 = 5\% \)、時点1から始まる1年フォワードレート \( f_1 = 7\% \) が与えられています。
\( PV = \frac{500}{(1.05)(1.07)} = 445.03 \)
重要なポイント:
• スポットレートは時点0からの旅の全行程を見る。
• フォワードレートは旅の個々の区間を見る。
• それ以前のすべてのフォワードレートがあれば、任意のスポットレートを構築できる。
4. よくある間違いと回避策
最初は難しく感じるかもしれませんが、大丈夫です。多くの学生が表記に混乱します。注意すべき落とし穴は以下の通りです:
1. 期間の混同:フォワードレートが「3年目に対する金利」(時点2から3までをカバー)なのか、「3年後に始まる金利」なのかを常に再確認してください。
2. 指数の忘れ:スポットレートを使う際は、必ず指数 \( t \) を使わなければなりません。1年フォワードレートを連鎖させる場合、複数の \( (1+f) \) を掛け合わせますが、各項の指数は通常1です。
3. 「年実効利回り」の誤解:この章では、特に断りがない限り、ほぼすべての利率が年実効利回りで示されます。「半年複利の名目利率」が出てきたら、まずは年実効利回りに変換すると計算が楽になります!
5. まとめと簡易公式シート
PVを求めるスポットレート公式:
\( PV = \sum \frac{CF_t}{(1+s_t)^t} \)
フォワードレートとの関係:
\( (1+s_n)^n = (1+f_{0,1})(1+f_{1,2})\dots(1+f_{n-1,n}) \)
(注:\( f_{0,1} \) は \( s_1 \) の別名です)
一般的な関係式:
時点 \( m \) から時点 \( n \) までの期間については:
\( (1+s_n)^n = (1+s_m)^m \times (1+f_{m,n})^{n-m} \)
試験の成功へのヒント:試験中にスポットレートの表が与えられ、フォワードレートを問われたら、タイムラインを描きましょう!「全期間の成長」(長期のスポットレート)と「既知の成長」(短期のスポットレート)を書き込みます。その「埋めるべき隙間」こそがフォワードレートです。
大丈夫、あなたならできます!これらの利率の関係を理解することは、Exam FMの「一般キャッシュフロー」セクションをマスターするための大きな一歩です。